借地借家法第10条(借地権の対抗力等)

2014年(平成26年)

【問 7】 賃貸人Aから賃借人Bが借りたA所有の甲土地の上に、Bが乙建物を所有する場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、Bは、自己名義で乙建物の保存登記をしているものとする。
2 Cが甲土地を不法占拠してBの土地利用を妨害している場合、Bは、Aの有する甲土地の所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使してCの妨害の排除を求めることができるほか、自己の有する甲土地の賃借権に基づいてCの妨害の排除を求めることができる。
正しい。土地の賃借人Bは、賃借権を保全するために、賃貸人である土地の所有者Aに代位して、土地を不法に占拠するCに対し妨害排除請求権を行使することができる(民法第423条第1項、大判S4.12.16)。また、賃借人Bは、借地上に自己名義で保存登記をした乙建物を所有しているので、借地権を第三者に対抗することができる(借地借家法第10条第1項)。この場合には、賃借権に基づく妨害排除請求権を行使することも可能である(民法第601条、最判S28.12.18)。
【問 11】 甲土地の所有者が甲土地につき、建物の所有を目的として賃貸する場合(以下「ケース①」という。)と、建物の所有を目的とせずに資材置場として賃貸する場合(以下「ケース②」という。)に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。
2 ケース①では、賃借人は、甲土地の上に登記されている建物を所有している場合には、甲土地が第三者に売却されても賃借人であることを当該第三者に対抗できるが、ケース②では、甲土地が第三者に売却された場合に賃借人であることを当該第三者に対抗する方法はない。
誤り。ケース①では借地借家法が適用され、ケース②では民法が適用される。借地借家法においては、「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。」と定めているので、ケース①では、賃借人は第三者に対抗することができる(借地借家法第10条第1項)。一方、民法では、「不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。」と定めているので、賃借権の登記があれば、ケース②の場合でも、第三者に対抗することはできる(民法第605条)。したがって、「ケース②では、甲土地が第三者に売却された場合に賃借人であることを当該第三者に対抗する方法はない。」という記述は、誤りである。

2013年(平成25年)

【問 12】 賃貸借契約に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。
3 二筆以上ある土地の借地権者が、そのうちの一筆の土地上に登記ある建物を所有し、登記ある建物がない他方の土地は庭として使用するために賃借しているにすぎない場合、登記ある建物がない土地には、借地借家法第10条第1項による対抗力は及ばない。
正しい。借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる(借地借家法第10条第1項)。数筆の土地を賃貸している事例で、対抗力は登記されている建物が存在する部分にしか及ばないとする判例(最判S44・12・23)があるため、「登記ある建物がない土地には、借地借家法第10条第1項による対抗力は及ばない。」とする本肢は、正しい記述である。

2012年(平成24年)

【問 11】 賃貸借契約に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。
1 建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において、借地権の登記がなくても、その土地上の建物に借地人が自己を所有者と記載した表示の登記をしていれば、借地権を第三者に対抗することができる。
正しい。借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる(借地借家法第10条第1項)。判例では、土地の取引をなす者は、地上建物の登記名義により、その名義者が地上に建物を所有する権原として借地権を有することを推知しうることから、本条は、借地権者の土地利用の保護の要請と、第三者の取引の安全の保護の要請との調和を図ろうとしているものとし、この法意に照らせば、借地権のある土地の上の建物についてなされるべき登記は権利の登記に限られることなく、借地権者が自己を所有者と記載した表示の登記のある建物を所有する場合も本条の要件を満たす旨積極に解した(最判S50.2.13)。
2 建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において、建物が全焼した場合でも、借地権者は、その土地上に減失建物を特定するために必要な事項等を掲示すれば、借地権を第三者に対抗することができる場合がある。
正しい。借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。この場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から2年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る(借地借家法第10条第1項・第2項)。一種の明認方法であるが、本肢のような対抗手段もある。
3 建物の所有を目的とする土地の適法な転借人は、自ら対抗力を備えていなくても、賃借人が対抗力のある建物を所有しているときは、転貸人たる賃借人の賃借権を援用して転借権を第三者に対抗することができる。
正しい。転貸借は、賃借人が賃借物(本肢の場合は土地)を転借人にさらに賃貸するものであるから、賃借権が第三者に対する対抗要件を備え、しかも賃貸人(本肢の場合は地主)の承諾を得るなどして転貸借が有効に成立した場合、転借人は、賃借人が自己の賃借権を対抗できる第三者に対し転貸借による自己の賃借権を主張することができる。この場合、転貸借についての登記の有無は関係がない(借地借家法第10条第1項、最判S39.11.20)。以上の判例により、転借人に転貸人たる賃借人の賃借権を援用することを認めている。

2008年(平成20年)

【問 13】 Aが所有している甲土地を平置きの駐車場用地として利用しようとするBに貸す場合と、一時使用目的ではなく建物所有目的を有するCに貸す場合とに関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。
4 AB間の土地賃貸借契約を書面で行っても、Bが賃借権の登記をしないままAが甲土地をDに売却してしまえばBはDに対して賃借権を対抗できないのに対し、AC間の土地賃貸借契約を口頭で行っても、Cが甲土地上にC所有の登記を行った建物を有していれば、Aが甲土地をDに売却してもCはDに対して賃借権を対抗できる。
正しい。Bが賃借権の登記をしていなかったときは、新所有者に賃借権を主張できない(民法第605条)。CがC所有の登記を行った建物を有していれば、甲土地の新所有者に対して賃借権を対抗できる(借地借家法第10条)。

2007年(平成19年)

【問 13】 Aが所有者として登記されている甲土地上に、Bが所有者として登記されている乙建物があり、CがAから甲土地を購入した場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。
2 BがAとの間で甲土地の使用貸借契約を締結していた場合には、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できる。
正しい。借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる(借地借家法第10条第1項)。ただし、使用貸借にはこの規定は適用されない。

2006年(平成18年)

【問 13】 自らが所有している甲土地を有効利用したいAと、同土地上で事業を行いたいBとの間の契約に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。
4 甲土地につき、Bが建物を所有して小売業を行う目的で存続期間を30年とする土地の賃貸借契約を締結している期間の途中で、Aが甲土地をCに売却してCが所有権移転登記を備えた場合、当該契約が公正証書でなされていても、BはCに対して賃借権を対抗することができない場合がある。
正しい。借地上の建物の登記がない場合などが該当する(借地借家法第10条)。

2003年(平成15年)

【問 13】 Aが、Bに、A所有の甲地を建物の所有を目的として賃貸し、Bがその土地上に乙建物を新築し、所有している場合に関する次の記述のうち、借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 Bが、乙建物につき自己名義の所有権の保存登記をしている場合は、甲地につき賃借権の登記をしていないときでも、甲地をAから譲渡され所有権移転登記を受けたCに対し、甲地の賃借権を対抗できる。
正しい。借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる(借地借家法第10条第1項)。
2 乙建物が滅失した場合でも、Bが借地借家法に規定する事項を甲地の上の見やすい場所に掲示したときは、Bは、甲地に賃借権の登記をしていなくても、滅失のあった日から2年間は、甲地をAから譲渡され所有権移転登記を受けたDに対し、甲地の賃借権を対抗できる。
正しい。本肢記述のとおり(借地借家法第10条第2項)。

2001年(平成13年)

【問 12】 Aは、昭和46年(西暦1971年)8月、Bから、その所有地を、建物の所有を目的として存続期間30年の約定で賃借し、その後A所有の建物を同土地上に建築し、A名義の所有権保存登記をしてきた。この場合、借地借家法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
3 Aは平成1 2年7月に再築のため建物を取り壊し、土地の上の見やすい場所に<旧建物を特定するために必要な事項、取り壊した日、建物を新たに築造する旨>を掲示した。この掲示が存続していれば、建物が未完成でも、平成13年8月時点で、Aは本件借地権を第三者に対抗できる。
正しい。借地借家法施行後に登記のある建物が滅失したときには、もとの契約が借地法施行時のものであっても、借地借家法第10条第2項(掲示による対抗力)の規定が適用される(借地借家法第10条第2項、附則第8条)。

1999年(平成11年)

【問 13】 Aは、建物所有の目的でBから1筆の土地を賃借し(借地権の登記はしていない)、その土地の上にA単独所有の建物を建築していたが、Bは、その土地をCに売却し、所有権移転登記をした。この場合、借地借家法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 Aは、建物について自己名義の所有権保存登記をしていても、そこに住んでいなければ、Cに対して借地権を対抗することができない。
誤り。借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる(借地借家法第10条第1項)。そこに住んでいることは要件ではない。
2 Aは、建物についてAの配偶者名義で所有権保存登記をしていても、Cに対して借地権を対抗することができない。
正しい。本人名義の登記でなければ、対抗要件にはならない(借地借家法第10条第1項、判例)。
3 Aがその土地の上に甲及び乙の2棟の建物を所有する場合、甲建物にのみA名義の所有権保存登記があれば、乙建物が未登記であっても、Aは、Cに対して借地権を対抗することができる。
正しい。借地上に複数の建物がある場合、そのうち1棟の建物に借地権者の登記があれば、他の建物に登記がなくても、その借地全体についての借地権を第三者に対抗できる(借地借家法第10条第1項、判例)。
4 Aの建物の登記上の所在の地番が、その土地の地番の表示と多少相違していても、建物の同一性が種類、構造、床面積等によって認識できる程度の軽微な相違であれば、Aは、Cに対して借地権を対抗することができる。
正しい。本肢記述のとおり(借地借家法第10条第1項、判例)。

1998年(平成10年)

【問 1】 Aの所有する土地をBが取得したが、Bはまだ所有権移転登記を受けていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、Bが当該土地の所有権を主張できない相手は、次の記述のうちどれか。
1 Aから当該土地を賃借し、その上に自己名義で保存登記をした建物を所有している者
主張できない。借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる(借地借家法第10条第1項)。Aから当該土地を賃借し、その上に自己名義で保存登記をした建物を所有している者は、この借地借家法の対抗力を有している。この借地人に対して、BがAから賃貸人の地位を取得したことを対抗するには、その土地の所有権移転登記が必要である(民法第177条)。

1996年(平成8年)

【問 13】 Aは、建物の所有を目的としてBから土地を賃借し、建物を建築して所有しているが、その土地の借地権については登記をしていない。この場合において、その土地の所有権がBからCに移転され、所有権移転登記がなされたときに関する次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Aが、Aの名義ではなく、Aと氏を同じくするAの長男名義で、本件建物につき保存登記をしている場合、Aは、借地権をCに対抗することができる。
誤り。借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる(借地借家法第10条第1項)。ただし、この登記はA本人の名義でなければならない(判例)。
2 Aが自己の名義で本件建物につき保存登記をしている場合で、BからCへの土地の所有権の移転が、当該保存登記後の差押えに基づく強制競売によるものであるとき、Aは、借地権をCに対抗することができる。
正しい。本肢記述のとおり(借地借家法第10条第1項)。
3 本件建物が火事により滅失した場合、建物を新たに築造する旨を本件土地の上の見やすい場所に掲示していれば、Aは、本件建物について登記していなかったときでも、借地権をCに対抗することができる。
誤り。建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から2年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る(借地借家法第10条第2項)。この規定は、滅失前の建物について登記をしている場合に限り適用される。本肢では、滅失前の建物について登記をしていないので、借地権をCに対抗することができない。
4 借地権が借地借家法第22条に規定する定期借地権である場合、公正証書によって借地契約を締結していれば、Aは、本件建物について登記していなかったときでも、借地権をCに対抗することができる。
誤り。定期借地権であるということで、借地権をCに対抗できるわけではなく、本件建物の登記が必要である(借地借家法第10条第1項、第22条)。

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