民法第898条(共同相続の効力)

2012年(平成24年)

【問 10】 Aは未婚で子がなく、父親Bが所有する甲建物にBと同居している。Aの母親Cは平成23年3月末日に死亡している。AにはBとCの実子である兄Dがいて、DはEと婚姻して実子Fがいたが、Dは平成24年3月末日に死亡している。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
2 Bが死亡した場合、甲建物につき法定相続分を有するFは、甲建物を1人で占有しているAに対して、当然に甲建物の明渡しを請求することができる。
誤り。相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する(民法第898条)。共同相続人の1人が相続開始後遺産中の不動産を単独で占有使用する場合、相続分割割合において過半数を有する他の相続人が、占有使用中の共同相続人に対し明渡し請求ができるかについて、判例は、少数持分権者も自己の持分に基づき占有するのであるから、多数持分権者も当然にその明渡しを請求できるものではなく、明け渡しを求める理由の立証責任を要するという(最判S41.5.19)。したがって、本肢の場合、共同相続人の1人であるFは、共有物である甲建物を単独で占有しているAに対して、当然にはその明渡しを請求することができない。

2004年(平成16年)

【問 12】 自己所有の建物に妻Bと同居していたAが、遺言を残さないまま死亡した。Aには先妻との間に子C及びDがいる。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Aの死後、遺産分割前にBがAの遺産である建物に引き続き居住している場合、C及びDは、Bに対して建物の明渡しを請求することができる。
誤り。共同相続人の一人であるBが単独で占有して使用している場合、Bは自己の持分権によって共有物を使用収益する権原に基づいて占有しているので、C・Dの持分権の合計が仮に過半数であったとしても、当然に建物の明け渡しを請求することはできない(民法第898条、判例)。

2003年(平成15年)

【問 12】 Aが死亡し、それぞれ3分の1の相続分を持つAの子B、C及びD(他に相続人はいない。 )が、全員、単純承認し、これを共同相続した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 相続財産である土地につき、遺産分割協議前に、Bが、CとDの同意なくB名義への所有権移転登記をし、これを第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、CとDは、自己の持分を登記なくして、その第三者に対抗できる。
正しい。共同相続では、相続人は自己の相続分を登記なくして第三者に対抗できる(民法第177条、第898条、判例)。
4 Bが相続開始時に金銭を相続財産として保管している場合、CとDは、遺産分割協議の成立前でも、自己の相続分に相当する金銭を支払うよう請求できる。
誤り。相続人は、遺産分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできない(民法第898条、判例)。

1999年(平成11年)

【問 3】 相続に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 相続開始の時において相続人が数人あるとき、遺産としての不動産は、相続人全員の共有に属する。
正しい。本肢記述のとおり(民法第898条)。

1995年(平成7年)

【問 11】 Aには、妻B、子C・Dがあり、A及びBは、CにA所有の資産全部を相続させAの事業も承継させたいと考えているが、Cは賛成し、Dは反対している。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
3 Dは、Aの死亡後で遺産分割前であっても、B及びCの同意を得なければ、自己の相続分を第三者に譲渡することはできない。
誤り。所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する(民法第206条)。分割前の相続財産は、相続人の共有であり、各共有者は、いつでも所有権に基づいて、自己の相続分を第三者に譲渡することができる(第898条、第899条)。

関係法令

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