民法第709条(不法行為による損害賠償)

2014年(平成26年)

【問 6】 Aは、Bに建物の建築を注文し、完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物に瑕疵があった場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
2 Bが建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき義務を怠ったために本件建物に基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には、当該瑕疵によって損害を被ったCは、特段の事情がない限り、Bに対して不法行為責任に基づく損害賠償を請求できる。
正しい。本肢記述のとおり、請負人Bが建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき義務を怠ったために本件建物に基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には、当該瑕疵によって損害を被った買主Cは、この瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなどの特段の事情がない限り、請負人Bに対して不法行為責任に基づく損害賠償を請求できる(民法第709条、最判H19.7.6)。

2013年(平成25年)

【問 9】 Aに雇用されているBが、勤務中にA所有の乗用車を運転し、営業活動のため顧客Cを同乗させている途中で、Dが運転していたD所有の乗用車と正面衝突した(なお、事故についてはBとDに過失がある。)場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
4 事故によって損害を受けたDは、Aに対して損害賠償を請求することはできるが、Bに対して損害賠償を請求することはできない。
誤り。Dが受けた損害はBの不法行為によるものであり、Dは、Aに対してだけでなく、Bに対しても損害賠償を請求することができる(民法第709条、第715条第1項)。

2012年(平成24年)

【問 8】 債務不履行に基づく損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 AがBと契約を締結する前に、信義則上の説明義務に違反して契約締結の判断に重要な影響を与える情報をBに提供しなかった場合、Bが契約を締結したことにより被った損害につき、Aは、不法行為による賠償責任を負うことはあっても、債務不履行による賠償責任を負うことはない。
正しい。契約当事者の一方が、契約の締結に際して、信義則上の説明義務に違反し契約の締結に影響のある情報を相手方に提供しなかったときは、その者は、相手方が契約を締結したことによって生じた損害について、不法行為責任を負うが、債務不履行責任は負わない(民法第415条、第709条、最判平23.4.22)。
【問 9】 Aに雇用されているBが、勤務中にA所有の乗用車を運転し、営業活動のため得意先に向かっている途中で交通事故を起こし、歩いていたCに危害を加えた場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
2 Cが即死であった場合には、Cには事故による精神的な損害が発生する余地がないので、AはCの相続人に対して慰謝料についての損害賠償責任を負わない。
誤り。被害者が即死した場合でも、受傷した瞬間に損害賠償請求権が発生し、相続人がこれを承継する(民法第709条、判例)。したがって、本肢の場合、AはCの相続人に対して慰謝料についての損害賠償責任を負う(同法第715条)。

2008年(平成20年)

【問 11】 Aが故意又は過失によりBの権利を侵害し、これによってBに損害が生じた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Aの加害行為によりBが即死した場合には、BにはAに対する慰謝料請求権が発生したと考える余地はないので、Bに相続人がいても、その相続人がBの慰謝料請求権を相続することはない。
誤り。被害者が即死した場合も、受傷した瞬間に損害賠償請求権が発生し、相続人が承継する(民法第709条、判例)。

2007年(平成19年)

【問 5】 不法行為による損害賠償に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 不法行為による損害賠償の支払債務は、催告を待たず、損害発生と同時に遅滞に陥るので、その時以降完済に至るまでの遅延損害金を支払わなければならない。
正しい。履行遅滞となる時期について、判例では「不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく損害の発生と同時に遅滞に陥るものと解すべきである。」としている(民法第709条)。
2 不法行為によって名誉を毀損された者の慰謝料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなかった場合でも、相続の対象となる。
正しい。本肢記述のとおり(民法第709条、判例)。

2005年(平成17年)

【問 11】 Aは、所有する家屋を囲う塀の設置工事を業者Bに請け負わせたが、Bの工事によりこの塀は瑕疵がある状態となった。Aがその後この塀を含む家屋全部をCに賃貸し、Cが占有使用しているときに、この瑕疵により塀が崩れ、脇に駐車中のD所有の車を毀損させた。A、B及びCは、この瑕疵があることを過失なく知らない。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
2 Bは、瑕疵を作り出したことに故意又は過失がなければ、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。
正しい。本肢記述のとおり(民法第709条)。

2001年(平成13年)

【問 10】 甲建物の占有者である(所有者ではない。 )Aは、甲建物の壁が今にも剥離しそうであると分かっていたのに、甲建物の所有者に通知せず、そのまま放置するなど、損害発生の防止のため法律上要求される注意を行わなかった。そのために壁が剥離して通行人Bが死亡した。この場合、Bの相続人からの不法行為に基づく損害賠償請求に関する次の記述は、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Bが即死した場合、B本人の損害賠償請求権は観念できず、その請求権の相続による相続人への承継はない。
誤り。被害者が即死した場合も、受傷した瞬間に損害賠償請求権が発生し、相続人が承継する(民法第709条、判例)。

2000年(平成12年)

【問 8】 Aが、その過失によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
4 Aの損害賠償債務は、BからAへ履行の請求があった時から履行遅滞となり、Bは、その時以後の遅延損害金を請求することができる。
誤り。不法行為の時点から履行遅滞になる(民法第709条、判例)。

1996年(平成8年)

【問 6】 AがBとの請負契約によりBに建物を建築させてその所有者となり、その後Cに売却した。Cはこの建物をDに賃貸し、Dが建物を占有していたところ、この建物の建築の際におけるBの過失により生じた瑕疵により、その外壁の一部が剥離して落下し、通行人Eが重傷を負った。この場合の不法行為責任に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
2 Bは、Aに対してこの建物の建築の請負契約に基づく債務不履行責任を負うことがあっても、Eに対して不法行為責任を負うことはない。
誤り。Bは、Aに対してこの建物の建築の請負契約に基づく債務不履行責任を負うことがある(民法第634条、第635条)。本問の瑕疵は、請負人Bの過失によって発生しているので、Bは、Eに対して不法行為責任を負う(同法第709条)。

1994年(平成6年)

【問 2】 Aは、「近く新幹線が開通し、別荘地として最適である」旨のBの虚偽の説明を信じて、Bの所有する原野(時価20万円)を、別荘地として2,000万円で購入する契約を締結した。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
1 Aは、当該契約は公序良俗に反するとして、その取消しを主張するとともに、Bの不法行為責任を追及することができる。
誤り。公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする(民法第90条)。したがって、「取消しを主張する」という本肢は誤りとなる。なお、不法行為責任の追及はすることができる(同法第709条)。

1992年(平成4年)

【問 9】 不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
2 不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者が催告をするまでもなく、その損害の発生のときから遅滞に陥る。
正しい。本肢記述のとおり(民法第709条、判例)。

関係法令

このページを閉じる

ページ上部に戻る