民法第545条(解除の効果)

2009年(平成21年)

【問 8】 売主Aは、買主Bとの間で甲土地の売買契約を締結し、代金の3分の2の支払と引換えに所有権移転登記手続と引渡しを行った。その後、Bが残代金を支払わないので、Aは適法に甲土地の売買契約を解除した。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Aの解除前に、BがCに甲土地を売却し、BからCに対する所有権移転登記がなされているときは、BのAに対する代金債権につき不履行があることをCが知っていた場合においても、Aは解除に基づく甲土地の所有権をCに対して主張できない。
正しい。解除前の第三者Cは登記を備えているので、保護される(民法第545条第1項、判例)。
2 Bは、甲土地を現状有姿の状態でAに返還し、かつ、移転登記を抹消すれば、引渡しを受けていた間に甲土地を貸駐車場として収益を上げていたときでも、Aに対してその利益を償還すべき義務はない。
誤り。本肢の場合、Bは、貸駐車場としてあげた利益(解除までの間目的物を使用したことによる利益)をAに返還すべき義務を負う(民法第545条、判例)。
4 Aは、Bが契約解除後遅滞なく原状回復義務を履行すれば、契約締結後原状回復義務履行時までの間に甲土地の価格が下落して損害を被った場合であっても、Bに対して損害賠償を請求することはできない。
誤り。本肢の場合、原状回復義務履行時までの間に甲土地の価格が下落して損害を被ったのであれば、Aは、Bに対して損害賠償を請求することができる(民法第545条第3項)。

2005年(平成17年)

【問 9】 売買契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
2 売主が、買主の代金不払を理由として売買契約を解除した場合には、売買契約はさかのぼって消滅するので、売主は買主に対して損害賠償請求はできない。
誤り。解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない(民法第545条第3項)。

2004年(平成16年)

【問 9】 AはBに甲建物を売却し、AからBに対する所有権移転登記がなされた。AB間の売買契約の解除と第三者との関係に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 BがBの債権者Cとの間で甲建物につき抵当権設定契約を締結し、その設定登記をした後、AがAB間の売買契約を適法に解除した場合、Aはその抵当権の消滅をCに主張できない。
正しい。当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。(民法第545条第1項)。第三者が保護されるためには登記が必要だが、Cは抵当権の登記をしているため保護される(判例)。
2 Bが甲建物をDに賃貸し引渡しも終えた後、AがAB間の売買契約を適法に解除した場合、Aはこの賃借権の消滅をDに主張できる。
誤り。Dは建物の引渡しを受けており、賃借権をAに対抗することができる(民法第545条第1項、借地借家法第31条第1項、判例)。
3 BがBの債権者Eとの間で甲建物につき抵当権設定契約を締結したが、その設定登記をする前に、AがAB間の売買契約を適法に解除し、その旨をEに通知した場合、BE間の抵当権設定契約は無効となり、Eの抵当権は消滅する。
誤り。Eは抵当権の登記をしていないので、抵当権をAには対抗できない。しかし、抵当権設定契約が無効になるわけではない民法第545条第1項、判例)。

2002年(平成14年)

【問 8】 Aは、A所有の土地を、Bに対し、1億円で売却する契約を締結し、手付金として1,000万円を受領した。Aは、決済日において、登記及び引渡し等の自己の債務の履行を提供したが、Bが、土地の値下がりを理由に残代金を支払わなかったので、登記及び引渡しはしなかった。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
2 Aは、この売買契約を解除するとともに、Bに対し、売買契約締結後解除されるまでの土地の値下がりによる損害を理由として、賠償請求できる。
正しい。本肢記述のとおり(民法第545条)。
4 Bが、AB間の売買契約締結後、この土地をCに転売する契約を締結していた場合、Aは、AB間の売買契約を解除しても、Cのこの土地を取得する権利を害することはできない。
誤り。問題ではAのもとに登記があるので、Cは登記を得ておらず、Aが解除しても第三者Cの権利を害することにはならない(民法第545条第1項)。

2001年(平成13年)

【問 5】 AからB、BからCに、甲地が、順次売却され、AからBに対する所有権移転登記がなされた。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
2 BからCへの売却後、AがAB間の契約を適法に解除して所有権を取り戻した場合、Aが解除を理由にして所有権登記をBから回復する前に、その解除につき善意のCがBから所有権移転登記を受けたときは、Cは甲地の所有権をAに対抗できる。
正しい。Cは登記を受けているので甲地の所有権をAに対抗できる。なお、Cの善意・悪意は関係ない(民法第545条第1項)。

1998年(平成10年)

【問 8】 Aが、Bに建物を3,000万円で売却した場合の契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
2 Bが建物の引渡しを受けて入居したが、2ヵ月経過後契約が解除された場合、Bは、Aに建物の返還とともに、2ヵ月分の使用料相当額を支払う必要がある。
正しい。当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う(民法第545条第1項)。Bは、Aに建物の返還とともに、2ヵ月分の使用料相当額を支払う必要がある。
3 Bが代金を支払った後Aが引渡しをしないうちに、Aの過失で建物が焼失した場合、Bは、Aに対し契約を解除して、代金の返還、その利息の支払い、引渡し不能による損害賠償の各請求をすることができる。
正しい。履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる(民法第543条)。当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う(同法第545条第1項)。解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない(同条第3項)。

1996年(平成8年)

【問 5】 A所有の土地について、AがBに、BがCに売り渡し、AからBへ、BからCへそれぞれ所有権移転登記がなされた場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
3 Cが移転登記を受ける際に、AB間の売買契約に解除原因が生じていることを知っていた場合で、当該登記の後にAによりAB間の売買契約が解除されたとき、Cは、Aに対して土地の所有権の取得を対抗できない。
誤り。Cは、解除前の第三者にあたり、CとAの優劣は登記の先後による。本肢では、Cが登記を備えているので、Cは、Aに対して土地の所有権の取得を対抗することができる(民法第177条、第545条第1項)。

 

【問 9】 Aが、B所有の建物を代金8,000万円で買い受け、即日3,000万円を支払った場合で、残金は3ヵ月後所有権移転登記及び引渡しと引換えに支払う旨の約定があるときに関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
4 Aが、履行期に残金を提供し、相当の期間を定めて建物の引渡しを請求したにもかかわらず、Bが建物の引渡しをしないので、AがCの建物を賃借せざるを得なかった場合、Aは、売買契約の解除のほかに、損害賠償をBに請求することができる。
正しい。本肢記述のとおり(民法第541条、第545条第3項)。

1994年(平成6年)

【問 6】 Aは、Bから土地建物を購入する契約(代金5,000万円、手付300万円、違約金1,000万円)を、Bと締結し、手付を支払ったが、その後資金計画に支障を来し、残代金を支払うことができなくなった。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
3 Aの債務不履行を理由に契約が解除された場合、Aは、Bに対し違約金を支払わなければならないが、手付の返還を求めることはできる。
正しい。当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない(民法第545条第1項・第3項、第703条、判例)。

1993年(平成5年)

【問 7】 Aがその所有する土地建物をBに売却する契約をBと締結したが、その後Bが資金計画に支障を来し、Aが履行の提供をしても、Bが残代金の支払いをしないため、Aが契約を解除しようとする場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Aは、Bに対し相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内にBの履行がないときは、その契約を解除し、あわせて損害賠償の請求をすることができる。
正しい。当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる(民法第541条)。解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない(同法第545条第3項)。

1991年(平成3年)

【問 4】 Aが所有する土地について次に掲げる事実が生じた場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
2 Aの所有地がAからD、DからEへと売り渡され、E名義の所有権移転登記がなされた後でも、AがDの債務不履行に基づきAD間の売買契約を解除した場合、Aは、その所有権をEに対抗することができる。
誤り。Eは、解除前の第三者にあたるが、登記を備えているので、Aは、その所有権をEに対抗することができない(民法第177条、第545条第1項)。

1989年(平成1年)

【問 3】 A所有の土地が、AからB、BからCへと売り渡され、移転登記も完了している。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
3 Aは、Bが売買代金を支払わないので、その売買契約を解除した場合、そのことを悪意のCに対し対抗することができる。
誤り。AとCの関係は、Cの善意・悪意で決するのではなく、登記の有無で決する(民法第177条、第545条第1項)。

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