民法第541条(履行遅滞等による解除権)

2010年(平成22年)

【問 9】 契約の解除に関する次の1から4までの記述のうり、民法の規定及び下記判決文によれば誤っているものはどれか。
(判決文)
同一当事者間の債権債務関係がその形式は甲契約及び乙契約といった2個以上の契約から成る場合であっても、それらの目的とするところが相互に密接に関連付けられていて、社会通念上、甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、甲契約上の債務の不履行を理由に、その債権者が法定解除権の行使として甲契約と併せて乙契約をも解除することができる。
1 同一当事者間で甲契約と乙契約がなされても、それらの契約の目的が相互に密接に関連付けられていないのであれば、 甲契約上の債務の不履行を理由に甲契約と合わせて乙契約をも解除できるわけではない。
正しい。本肢記述のとおり(民法第541条、判例)。
2 同一当事者間で甲契約と乙契約がなされた場合、甲契約の債務が履行されることが乙契約の目的の達成に必須であると乙契約の契約書に表示されていたときに限り、甲契約上の債務の不履行 を理由に甲契約と合わせて乙契約をも解除することができる。
誤り。それらの目的とするところが相互に密接に関連付けられていて、社会通念上、甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、甲契約上の債務の不履行を理由に、その債権者が法定解除権の行使として甲契約と併せて乙契約をも解除することができる(民法第541条、判例)。甲契約の債務が履行されることが乙契約の目的の達成に必須であると乙契約の契約書に表示されていたときに限るわけではない。
3 同一当事者間で甲契約と乙契約がなされ、それらの契約の目的が相互に密接に関連付けられていても、そもそも甲契約を解除することができないような付随的義務の不履行があるだけでは、乙契約も解除することはできない。
正しい。本肢記述のとおり(民法第541条、判例)。
4 同一当事者間で甲契約(スポーツクラブ会員権契約)と同時に乙契約(リゾートマンションの区分所有権の売買)が締結された場合に、甲契約の内容たる屋内プールの完成及び供用に遅延があると、この履行遅滞を理由として乙契約を民法第541条により解除できる場合がある。
正しい。本肢記述のとおり(民法第541条、判例)。

 

【問 12】 Aは、B所有の甲建物につき、居住を目的として、期間2年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約(以下この間において「本件契約」という。)をBと締結して建物の引渡しを受けた。この場合における次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。
2 AがBとの間の信頼関係を破壊し、本件契約の継続を著しく困難にした場合であっても、Bが本件契約を解除するためには、民法第541条所定の催告が必要である。
誤り。本肢の場合は、民法第541条所定の催告をすることなく、本件契約を解除することができる(民法第541条、判例)。

2006年(平成18年)

【問 8】 AはBとの間で、土地の売買契約を締結し、Aの所有権移転登記手続とBの代金の支払を同時に履行させることとした。決済約定日に、Aは所有権移転登記手続を行う債務の履行の提供をしたが、Bが代金債務につき弁済の提供をしなかったので、Aは履行を拒否した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
2 Aは、一旦履行の提供をしているので、これを継続しなくても、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内にBが履行しないときは土地の売買契約を解除できる。
正しい。本肢記述のとおり(民法第541条、判例)。

2004年(平成16年)

【問 13】 AはBに対し甲建物を月20万円で賃貸し、Bは、Aの承諾を得た上で、甲建物の一部をCに対し月10万円で転貸している。この場合、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。
4 賃貸人AがAB間の賃貸借契約を賃料不払いを理由に解除する場合は、転借人Cに通知等をして賃料をBに代わって支払う機会を与えなければならない。
誤り。賃借人の債務不履行により賃貸人が賃貸借契約を解除しようとする場合には、履行遅滞による解除権が適用され、AはBに対して相当の期間を定めて催告し、その期間にBの履行がなければ契約を解除できる。AB間の賃貸借契約が終了した結果、BはCに対して履行不能になり、転貸借は終了する。なお、この場合に、Cに通知等をして賃料をBに代わって支払う機会を与える必要はない(民法第541条、判例)。

2002年(平成14年)

【問 8】 Aは、A所有の土地を、Bに対し、1億円で売却する契約を締結し、手付金として1,000万円を受領した。Aは、決済日において、登記及び引渡し等の自己の債務の履行を提供したが、Bが、土地の値下がりを理由に残代金を支払わなかったので、登記及び引渡しはしなかった。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 Aは、この売買契約を解除せず、Bに対し、残代金の支払を請求し続けることができる。
正しい。本肢記述のとおり(民法第541条)。
3 Bが、AB間の売買契約締結後、この土地をCに転売する契約を締結していた場合で、Cがやはり土地の値下がりを理由としてBに代金の支払をしないとき、Bはこれを理由として、AB間の売買契約を解除することはできない。
正しい。Aには債務不履行になる帰責事由がないので、BはAに対して本肢の内容を理由に契約を解除することはできない(民法第541条)。

1998年(平成10年)

【問 6】 AはBから建物を賃借し、Bの承諾を得て、当該建物をCに転貸している。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。なお、Aの支払うべき賃料の額は、Cの支払うべき転借料の額より小さいものとする。
3 Bは、Aの債務不履行によりAB間の賃貸借契約を解除しようとする場合、Cに対して、3ヵ月以前に通知し、Aに代わって賃料を支払う機会を与えなければならない。
誤り。Aは、Bの債務不履行を理由としてBとの賃貸借契約を解除するときは、事前にCに通知等をして、賃料を代払いする機会を与える必要はない(借地借家法第34条第1項、判例)。

 

【問 8】 Aが、Bに建物を3,000万円で売却した場合の契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Aが定められた履行期に引渡しをしない場合、Bは、3,000万円の提供をしないで、Aに対して履行の催告をしたうえ契約を解除できる。
誤り。債務者Aが同時履行の抗弁権を有する場合には、債権者Bは自分の債務の履行を提供しておかなければ解除をすることができない(民法第541条、判例)。

1996年(平成8年)

【問 9】 Aが、B所有の建物を代金8,000万円で買い受け、即日3,000万円を支払った場合で、残金は3ヵ月後所有権移転登記及び引渡しと引換えに支払う旨の約定があるときに関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 Aは、履行期前でも、Bに残金を提供して建物の所有権移転登記及び引渡しを請求し、Bがこれに応じない場合、売買契約を解除することができる。
誤り。Bには、3ヵ月後までは、所有権移転登記及び引渡しをする義務はなく(これを「期限の利益」という)、Aは、売買契約を解除することはできない(民法第136条第1項、第541条)。
3 Bが、Aの代金支払いの受領を拒否してはいないが、履行期になっても建物の所有権移転登記及び引渡しをしない場合、Aは、Bに催告するだけで売買契約を解除することができる。
誤り。売主Bがその債務を履行しない場合において、買主Aが相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、買主Aは、契約の解除をすることができるが、この場合は、買主Aは、自らの履行の提供をしていなければならない(民法第541条)。
4 Aが、履行期に残金を提供し、相当の期間を定めて建物の引渡しを請求したにもかかわらず、Bが建物の引渡しをしないので、AがCの建物を賃借せざるを得なかった場合、Aは、売買契約の解除のほかに、損害賠償をBに請求することができる。
正しい。本肢記述のとおり(民法第541条、第545条第3項)。

 

【問 11】 AがBに対し、A所有の建物を売り渡し、所有権移転登記を行ったが、まだ建物の引渡しはしていない場合で、代金の支払いと引換えに建物を引き渡す旨の約定があるときに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
4 Bが代金の支払いを終え、建物の引渡しを求めたのにAが応じないでいる場合でも、建物が地震で全壊したときは、Bは、契約を解除して代金の返還を請求することができない。
誤り。本肢は、債務不履行の問題となり、Bは、契約を解除して代金の返還を請求することができる(民法第541条、第543条、判例)。

1993年(平成5年)

【問 7】 Aがその所有する土地建物をBに売却する契約をBと締結したが、その後Bが資金計画に支障を来し、Aが履行の提供をしても、Bが残代金の支払いをしないため、Aが契約を解除しようとする場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Aは、Bに対し相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内にBの履行がないときは、その契約を解除し、あわせて損害賠償の請求をすることができる。
正しい。当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる(民法第541条)。解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない(同法第545条第3項)。
2 AがBに対して履行を催告した場合において、その催告期間が不相当に短いときでも、催告の時より起算して客観的に相当の期間を経過して、Bの履行がないときは、Aは、改めて催告しなくても、その契約を解除することができる。
正しい。本肢記述のとおり(民法第541条、判例)。
4 AがBに対し相当の期間を定めて履行を催告した際、あわせて「催告期間内に履行がないときは、改めて解除の意思表示をしなくても、契約を解除する」との意思表示をし、かつ、その期間内にBの履行がない場合でも、Aがその契約を解除するには、改めて解除の意思表示をする必要がある。
誤り。本肢の場合は、改めて解除の意思表示をしなくても契約は解除される(民法第127条第1項、第541条、判例)。

1992年(平成4年)

【問 8】 居住用不動産の売買契約の解除又は取消に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
2 買主が支払期日に代金を支払わない場合、売主は、不動産の引渡しについて履行の提供をしなくても、催告をすれば、当該契約を解除することができる。
誤り。相手方の債務不履行を追及するためには、自らの履行の提供が必要である(民法第533条、第541条)。

1989年(平成1年)

【問 9】 A所有の家屋につき、Aを売主、Bを買主とする売買契約が成立した。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
4 家屋の所有権移転登記が完了し、引渡し期日が過ぎたのに、Aがその引渡しをしないでいたところ、その家屋が類焼によって滅失した場合、Bは、契約を解除することができる。
正しい。本肢は危険負担の問題ではなく、Aの債務不履行となる(民法第541条、判例)。

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