民法第376条(抵当権の処分)

2015年(平成27年)

【問 7】 債務者Aが所有する甲土地には、債権者Bが一番抵当権(債権額2,000万円)、債権者Cが二番抵当権(債権額2,400万円)、債権者Dが三番抵当権(債権額4,000万円)をそれぞれ有しており、Aにはその他に担保権を有しない債権者E(債権額2,000万円)がいる。甲土地の競売に基づく売却代金5,400万円を配当する場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 BがEの利益のため、抵当権を譲渡した場合、Bの受ける配当は0円である。
正しい。抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる(民法第376条第1項)。担保権を有しないEに抵当権を譲渡した場合、Eは、一番抵当権者として、Bの配当額の範囲内で配当を受けることができる。したがって、Eは2,000万円の配当を受けることができ、一方、Bは無担保債権者になるので配当は0円である。
2 BがDの利益のため、抵当権の順位を譲渡した場合、Bの受ける配当は800万円である。
誤り。抵当権の順位の譲渡があると、本来Bが配当を受けるはずの2,000万円と、本来Dが配当を受けられるはずの1,000万円の合計額3,000万円から、まず、Dが配当を受けて、次にBが配当を受けることになる。したがって、Dの配当額は3,000万円となり、Bの配当額は0円となる(民法第376条第1項)。
3 BがEの利益のため、抵当権を放棄した場合、Bの受ける配当は1,000万円である。
正しい。抵当権の放棄があると、Bの配当額2,000万円を、BとEが各自の債権額に応じて按分することになる。本問では、BとEの債権額は1:1であるから、BもEも1,000万円の配当を受けることになる(民法第376条第1項)。
4 BがDの利益のため、抵当権の順位を放棄した場合、Bの受ける配当は1,000万円である。
正しい。抵当権の順位の放棄があると、本来Bが配当を受けるはずの2,000万円と、本来Dが配当を受けられるはずの1,000万円の合計額3,000万円を、BとDが各自の債権額に応じて按分することになる。本問ではBとDの債権額は1:2であるから、Bが受ける配当は1,000万円、Dが受ける配当は2,000万円となる(民法第376条第1項)。

2014年(平成26年)

【問 4】 AがBとの間で、CのBに対する債務を担保するためにA所有の甲土地に抵当権を設定する場合と根抵当権を設定する場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
4 抵当権の場合には、BはCに対する他の債権者の利益のために抵当権の順位を譲渡することができるが、元本の確定前の根抵当権の場合には、Bは根抵当権の順位を譲渡することができない。
正しい。抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる(民法第376条第1項)。元本の確定前においては、根抵当権者は、第376条第1項の規定による根抵当権の処分をすることができない(同法第398条の11第1項)。

2008年(平成20年)

【問 4】 Aは、Bから借り入れた2,000万円の担保として抵当権が設定されている甲建物を所有しており、抵当権設定の後である平成20年4月1日に、甲建物を賃借人Cに対して賃貸した。Cは甲建物に住んでいるが、賃借権の登記はされていない。この場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。
3 AがEからさらに1,000万円を借り入れる場合、甲建物の担保価値が1,500万円だとすれば、甲建物に抵当権を設定しても、EがBに優先して甲建物から債権全額の回収を図る方法はない。
誤り。AがBに債務を全額弁済すれば、Bの抵当権は消滅し、Eが一番抵当権者になる。また、抵当権の順位の譲渡という制度もある(民法第376条)。

2006年(平成18年)

【問 5】 Aは、Bから借り入れた2,400万円の担保として第一順位の抵当権が設定されている甲土地を所有している。Aは、さらにCから1,600万円の金銭を借り入れ、その借入金全額の担保として甲土地に第二順位の抵当権を設定した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 抵当権の実行により甲土地が競売され3,000万円の配当がなされる場合、BがCに抵当権の順位を譲渡していたときは、Bに1,400万円、Cに1,600万円が配当され、BがCに抵当権の順位を放棄していたときは、Bに1,800万円、Cに1,200万円が配当される。
正しい。本肢記述のとおり(民法第376条)。BがCに対して抵当権の順位を譲渡すると、BC間では、Cが先順位になる。BがCに対して抵当権の順位の放棄をすると、BとCは同順位に扱われる。同順位の場合はあん分した額をそれぞれ受けることになる。

1998年(平成10年)

【問 5】 Aは、Bから借金をし、Bの債権を担保するためにA所有の土地及びその上の建物に抵当権を設定した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
3 Bは、第三者Fから借金をした場合、Aに対する抵当権をもって、さらにFの債権のための担保とすることができる。
正しい。抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とすることができる(民法第376条第1項)。これを、転抵当という。

関係法令

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