民法第372条(留置権等の規定の準用)

2013年(平成25)

【問 5】 抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 債権者が抵当権の実行として担保不動産の競売手続をする場合には、被担保債権の弁済期が到来している必要があるが、対象不動産に関して発生した賃料債権に対して物上代位をしようとする場合には、被担保債権の弁済期が到来している必要はない。
誤り。抵当権者は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、抵当権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない(民法第304条、第372条)。抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ(同法第371条)。ここでいう果実には賃料などの法定果実も含まれるため、賃料に対する物上代位権の行使は、被担保債権が債務不履行 (履行遅滞など) になっていることが必要である。したがって、対象不動産に関して発生した賃料債権に対して物上代位をしようとする場合には、被担保債権の弁済期が到来している必要がある。

2012年(平成24年)

【問 7】 物上代位に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、物上代位を行う担保権者は、物上代位の対象とする目的物について、その払渡し又は引渡しの前に差し押さえるものとする。
1 Aの抵当権設定登記があるB所有の建物の賃料債権について、Bの一般債権者が差押えをした場合には、Aは当該賃料債権に物上代位することができない。
誤り。一般債権者の差押えと抵当権者Aの差押えが競合した場合、「一般債権者の申立てによる差押え命令の第三債務者への送達」と「抵当権設定登記」の先後でその優劣は決定される(民法第372条、判例)。本肢の場合は、抵当権の登記の方が先であるため、抵当権者Aは、賃料債権に物上代位することができる。
2 Aの抵当権設定登記があるB所有の建物の賃料債権について、Aが当該建物に抵当権を実行していても、当該抵当権が消滅するまでは、Aは当該賃料債権に物上代位することができる。
正しい。抵当権者Aは、抵当権を実行しても、当該抵当権が消滅するまでは、抵当権の目的物である建物の賃料債権に物上代位することができる(民法第372条)。
3 Aの抵当権設定登記があるB所有の建物が火災によって焼失してしまった場合、Aは、当該建物に掛けられた火災保険契約に基づく損害保険金請求権に物上代位することができる。
正しい。抵当不動産の滅失・損傷の場合に所有者Bが取得する損害保険金請求権は、滅失・損傷を契機としてではあるが、直接には損害保険契約から発生するものである。しかし、これも、目的不動産の価値に代わるものであるから、保険金(請求権)も抵当権者Aの物上代位の対象となる、と解するのが判例・通説である(民法第372条、判例)。
4 Aの抵当権設定登記があるB所有の建物について、CがBと賃貸借契約を締結した上でDに転貸していた場合、Aは、CのDに対する転貸賃料債権に当然に物上代位することはできない。
正しい。判例は、賃料債権への物上代位を肯定する立場に立つが、賃借人(転貸人)が取得すべき転貸借債権についてまでは物上代位権の行使は認めていない(民法第372条、判例)。賃借人Cは、抵当権設定者Bとは立場を異にし、自己に属するDに対する債権を被担保債権(AのBに対する債権)の弁済に供されるべき立場にはないからである。

2010年(平成22年)

【問 5】 AはBから2,000万円を借り入れて土地とその上の建物を購入し、Bを抵当権者として当該土地及び建物に2,000万円を被担保債権とする抵当権を設定し、登記した。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているのはどれか。
2 当該建物に火災保険が付されていて、当該建物が火災によって焼失してしまった場合、Bの抵当権は、その火災保険契約に基づく損害保険金請求権に対しても行使することができる。
正しい。抵当権には物上代位性があり、本肢記述のとおり(民法第304条、第372条)。

2009年(平成21年)

【問 5】 担保物権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 抵当権者も先取特権者も、その目的物が火災により焼失して債務者が火災保険請求権を取得した場合には、その火災保険金請求権に物上代位することができる。
正しい。本肢記述のとおり(民法第304条、第372条)。

2008年(平成20年)

【問 4】 Aは、Bから借り入れた2,000万円の担保として抵当権が設定されている甲建物を所有しており、抵当権設定の後である平成20年4月1日に、甲建物を賃借人Cに対して賃貸した。Cは甲建物に住んでいるが、賃借権の登記はされていない。この場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。
1 AがBに対する借入金の返済につき債務不履行となった場合、Bは抵当権の実行を申し立てて、AのCに対する賃料債権に物上代位することも、AC間の建物賃貸借契約を解除することもできる。
誤り。抵当権者Bは、賃料債権に物上代位することはできるが、賃貸借契約を解除することはできない(民法第304条、第372条)。

2005年(平成17年)

【問 5】 物上代位に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、物上代位を行う担保権者は、物上代位の対象となる目的物について、その払渡し又は引渡しの前に他の債権者よりも先に差し押さえるものとする。
2 抵当権者は、抵当権を設定している不動産が賃借されている場合には、賃料に物上代位することができる。
正しい。本肢記述のとおり(民法第304条、第372条)。
3 抵当権者は、抵当権を設定している建物が火災により焼失した場合、当該建物に火災保険が付されていれば、火災保険金に物上代位することができる。
正しい。本肢記述のとおり(民法第304条、第372条、判例)。

2003年(平成15年)

【問 5】 Aは、B所有の建物に抵当権を設定し、その旨の登記をした。Bは、その抵当権設定登記後に、この建物をCに賃貸した。Cは、この契約時に、賃料の6ヵ月分相当額の300万円の敷金を預託した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
1 Bが、BのCに対する将来にわたる賃料債権を第三者に譲渡し、対抗要件を備えた後は、Cが当該第三者に弁済する前であっても、Aは、物上代位権を行使して当該賃料債権を差し押さえることはできない。
誤り。債権譲渡後に抵当権者はその債権を差し押さえることができる(民法第372条、判例)。
2 Bの一般債権者であるDが、BのCに対する賃料債権を差し押さえ、その命令がCに送達された後は、Cが弁済する前であっても、Aは、物上代位権を行使して当該賃料債権を差し押さえることはできない。
誤り。一般債権者の差押えと抵当権者の差押えが競合した場合、「一般債権者の申立てによる差押え命令の第三債務者への送達」と「抵当権設定登記」の先後でその優劣は決定される(民法第372条、判例)。本肢の場合は、抵当権の登記の方が先である。
4 Aが物上代位権を行使して、BのCに対する賃料債権を差し押さえた後、賃貸借契約が終了し建物を明け渡した場合、Aは、当該賃料債権について敷金が充当される限度において物上代位権を行使することはできない。
正しい。賃料債権に対する物上代位権の行使として差押えがあった場合において、当該賃貸借契約が終了し目的物が明渡されたときは、賃料債権は、敷金の充当によりその限度内で消滅し敷金の充当により消滅した賃料債権については抵当権者は物上代位権を行使することはできない(民法第372条、判例)。

1999年(平成11年)

【問 4】 Aは、Bからの借入金で建物を建築し、その借入金の担保として当該建物に第一順位の抵当権を設定し、その登記を行った。この登記の後、Aが、Cとの間で本件建物の賃貸借契約を締結した場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 AがCに対して賃貸借契約に基づき賃料債権を有している場合、Bは、建物に対する抵当権に基づく差押えの前であっても、当該賃料債権を抵当権に基づき差し押えることができる。
正しい。本肢記述のとおり(民法第372条)。

1995年(平成7年)

【問 6】 AがBに対する債務の担保のためにA所有建物に抵当権を設定し、登記をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 第三者の不法行為により建物が焼失したのでAがその損害賠償金を受領した場合、Bは、Aの受領した損害賠償金に対して物上代位をすることができる。
誤り。抵当権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、抵当権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない(民法第304条第1項、第372条)。

1991年(平成3年)

【問 7】 不動産を目的とする担保物権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
4 不動産を目的とする担保物権は、被担保債権の全部が弁済されるまでは、目的物の全部の上にその効力を及ぼす。
正しい。本肢記述のとおり(民法第296条、第305条、第350条、第372条)。

1990年(平成2年)

【問 6】 Aは、BからBの所有地を2,000万円で買い受けたが、当該土地には、CのDに対する1,000万円の債権を担保するため、Cの抵当権が設定され、その登記もされていた。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
3 Cは、BのAに対する代金債権について、差押えをしなくても、他の債権者に優先して、1,000万円の弁済を受けることができる。
誤り。抵当権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、抵当権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない(民法第304条、第372条)。

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