民法第295条(留置権の内容)

2013年(平成25)

【問 4】 留置権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 建物の賃借人が賃貸人の承諾を得て建物に付加した造作の買取請求をした場合、賃借人は、造作買取代金の支払を受けるまで、当該建物を留置することができる。
誤り。造作買取請求権による代金は、造作に関した債権であるにとどまり、建物に関して生じた債権とはいえないから、留置権を理由として建物の明渡しを拒むことはできない(民法第295条第1項、大判S6・1・17)。
2 不動産が二重に売買され、第2の買主が先に所有権移転登記を備えたため、第1の買主が所有権を取得できなくなった場合、第1の買主は、損害賠償を受けるまで当該不動産を留置することができる。
誤り。不動産の二重売買において、第一の買主が履行不能を理由とする売主に対する損害賠償債権につき、第二の買主からの引渡請求に対し、留置権を主張することはできない(民法第295条第1項、最判S43・11・21)。
3 建物の賃貸借契約が賃借人の債務不履行により解除された後に、賃借人が建物に関して有益費を支出した場合、賃借人は、有益費の償還を受けるまで当該建物を留置することができる。
誤り。留置権が成立するためには、「他人の物の占有」が「その物に生じた債権」を有することが必要であるが、「占有が不法行為により始まった場合」には、留置権は成立しない。例えば、賃借人の賃料不払いなどにより賃貸借契約が解除された後も、賃借人が占有を続けているとすればそれは不法占有であるが、その不法占有の期間中に賃借物に必要費や有益費などを支出した場合、その費用償還請求権に基づいて留置権を主張できるかとういう問題について、判例は、留置権の成立を否定している(民法第295条第1項、判T10・12・23)。
4 建物の賃借人が建物に関して必要費を支出した場合、賃借人は、建物所有者ではない第三者が所有する敷地を留置することはできない。
正しい。留置権が成立するためには、「他人の物の占有」が「その物に生じた債権」を有することである。本肢の必要費は建物に関するものであり、建物所有者でない第三者が所有する敷地は「その物(本肢では建物)」とはいえず、留置権の対象とはならない(民法第295条第1項、大判T11・8・21)。

2009年(平成21年)

【問 5】 担保物権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
3 留置権は動産についても不動産についても成立するのに対し、先取特権は動産については成立するが不動産については成立しない。
誤り。留置権・先取特権とも、動産・不動産のどちらについても成立する(民法第295条、第311条、第325条)。

2007年(平成19年)

【問 7】 担保物権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
2 建物の賃借人が賃貸人に対して造作買取代金債権を有している場合には、造作買取代金債権は建物に関して生じた債権であるので、賃借人はその債権の弁済を受けるまで、建物を留置することができる。
誤り。造作買取請求権に基づいて建物を留置することはできない(民法第295条、判例)。

1997年(平成9年)

【問 3】 建物の賃貸借契約における賃借人Aに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Aが、建物賃借中に建物の修繕のため必要費を支出した場合、Aは、その必要費の償還を受けるまで、留置権に基づき当該建物の返還を拒否できる。
正しい。賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる(民法第608条第1項)。建物賃借人Aが、建物賃借中に建物の修繕のため必要費を支出した場合、Aは、その必要費の償還を受けるまで、留置権に基づき当該建物の返還を拒否できる(同法第295条第1項)。
2 Aの債務不履行により建物の賃貸借契約が解除された後に、Aが建物の修繕のため必要費を支出した場合、Aは、その必要費の償還を受けるまで、留置権に基づき当該建物の返還を拒否できる。
誤り。本肢は、債務不履行により解除されているため、Aは不法に建物を占拠していることになり、不法に占拠しているAが必要費を支出しても、留置権の行使はできない(民法第295条第2項、判例)。

1991年(平成3年)

【問 7】 不動産を目的とする担保物権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 不動産を目的とする担保物権の中には、登記なくして第三者に対抗することができるものもある。
正しい。留置権が該当する(民法第295条)。

関係法令

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