民法第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

2015年(平成27年)

【問 4】 A所有の甲土地を占有しているBによる権利の時効取得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 Aから甲土地を買い受けたCが所有権の移転登記を備えた後に、Bについて甲土地所有権の取得時効が完成した場合、Bは、Cに対し、登記がなくても甲土地の所有者であることを主張することができる。
正しい。時効の完成前に甲土地を買い受けたCに対しては、Bは、登記がなくても甲土地の所有者であることを主張することができる(民法第177条、最判S41.11.22)。

2014年(平成26年)

【問 4】 AがBとの間で、CのBに対する債務を担保するためにA所有の甲土地に抵当権を設定する場合と根抵当権を設定する場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
2 抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には登記が必要であるが、根抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には、登記に加えて、債務者Cの異議を留めない承諾が必要である。
誤り。抵当権も根抵当権も設定した旨を第三者に対抗する場合には登記が必要である(民法第177条)。根抵当権の場合に限り、「登記に加えて、債務者Cの異議を留めない承諾が必要である。」という規定はない。

2012年(平成24年)

【問 6】 A所有の甲土地についての所有権移転登記と権利の主張に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 甲土地につき、時効により所有権を取得したBは、時効完成前にAから甲土地を購入して所有権移転登記を備えたCに対して、時効による所有権の取得を主張することができない。
誤り。時効により土地の所有権を取得したBは、所有権移転登記を備えていないときであっても、時効完成前に当該土地を購入して登記を備えたCに対し、時効による所有権の取得を主張することができる(民法第177条、判例)。
2 甲土地の賃借人であるDが、甲土地上に登記ある建物を有する場合に、Aから甲土地を購入したEは、所有権移転登記を備えていないときであっても、Dに対して、自らが賃貸人であることを主張することができる。
誤り。土地の賃貸人Aから当該土地を購入したEは、所有権移転登記を備えなければ、賃借人Dに対して、自らが賃貸人であることを主張することができない(民法第177条、判例)。
3 Aが甲土地をFとGとに対して二重に譲渡してFが所有権移転登記を備えた場合に、AG間の売買契約の方がAF間の売買契約よりも先になされたことをGが立証できれば、Gは、登記がなくても、Fに対して自らが所有者であることを主張することができる。
誤り。土地が二重に譲渡された場合、譲受人間の優劣は、契約締結時期の先後ではなく、登記の先後によって決せられる(民法第177条、判例)。したがって、AG間の売買契約の方がAF間の売買契約よりも先になされたことをGが立証できたとしても、Gは、登記を備えなければ、Fに対して自らが所有者であることを主張することができない。
4 Aが甲土地をHとIとに対して二重に譲渡した場合において、Hが所有権移転登記を備えない間にIが甲土地を善意のJに譲渡してJが所有権移転登記を備えたときは、Iがいわゆる背信的悪意者であっても、Hは、Jに対して自らが所有者であることを主張することができない。
正しい。背信的悪意者から土地を譲り受け登記を備えたJは、自らが背信的悪意者と評価されない限り、当該土地の所有権の取得を第三者(H)に対抗することができる(民法第177条、判例)。

2011年(平成23年)

【問 1】 A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 AがBにだまされたとして詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消した後、Bが甲土地をAに返還せずにDに転売してDが所有権移転登記を備えても、AはDから甲土地を取り戻すことができる。
誤り。Dは取消し後の第三者にあたり、AとDは対抗関係となる。Dが登記を備えているのでAはDから甲土地を取戻すことはできない(民法第177条、判例)。

2010年(平成22年)

【問 4】 AがBから甲土地を購入したところ、甲土地の所有者を名のるCがAに対して連絡してきた。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 CもBから甲土地を購入しており、その売買契約書の日付とBA間の売買契約書の日付が同じである場合、登記がなくても、契約締結の時刻が早い方が所有権を主張することができる。
誤り。不動産に関する物権の得喪及び変更は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない(民法第177条)。契約締結の時刻は関係ない。
2 甲土地はCからB、BからAと売却されており、CB間の売買契約がBの強迫により締結されたことを理由として取り消された場合には、BA間の売買契約締結の時期にかかわらず、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる。
誤り。CB間の売買契約が取消される前にBA間の売買契約が締結された場合、Aは取消し前の第三者にあたり、Cは登記がなくてもAに対し、所有権を主張することができる(民法第96条、判例)。一方、CB間の売買契約が取り消された後にBA間の売買契約が締結された場合、Aは取消し後の第三者にあたるため、CとAは対抗関係に立ち、Cは登記がなければAに対し、所有権を主張することができない(民法第177条、判例)。
3 Cが時効により甲土地の所有権を取得した旨主張している場合、取得時効の進行中にBA間で売買契約及び所有権移転登記がなされ、その後に時効が完成しているときには、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる。
正しい。本肢のAは時効完成前の第三者にあたるため、CとAは対抗関係に立たず、Cは、登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる(民法第177条、判例)。

2008年(平成20年)

【問 2】 所有権がAからBに移転している旨が登記されている甲土地の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 CはBとの間で売買契約を締結して所有権移転登記をしたが、甲土地の真の所有者はAであって、Bが各種の書類を偽造して自らに登記を移していた場合、Aは所有者であることをCに対して主張できる。
正しい。Bは無権利者であり、無権利者から移転登記を受けたCもまた無権利者である。無権利者に対しては真実の所有者Aは登記がなくても対抗することができる(民法第177条)。
3 EはBとの間で売買契約を締結したが、BE間の売買契約締結の前にAがBの債務不履行を理由にAB間の売買契約を解除していた場合、Aが解除した旨の登記をしたか否かにかかわらず、Aは所有者であることをEに対して主張できる。
誤り。契約解除後の第三者EとAは、対抗関係となる。したがって、Aは登記をしなければ、所有者であることを主張することはできない(民法第177条)。

2007年(平成19年)

【問 3】 Aが所有者として登記されている甲土地の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 Aと売買契約を締結して所有権を取得したEは、所有権の移転登記を備えていない場合であっても、正当な権原なく甲土地を占有しているFに対し、所有権を主張して甲土地の明渡しを請求することができる。
正しい。本肢記述のとおり(民法第177条、判例)。
4 Aを所有者とする甲土地につき、AがGとの間で10月1日に、Hとの間で10月10日に、それぞれ売買契約を締結した場合、G、H共に登記を備えていないときには、先に売買契約を締結したGがHに対して所有権を主張することができる。
誤り。G、Hのいずれか登記を備えた方が所有権を主張できる(民法第177条)。

 

【問 6】 不動産の物権変動の対抗要件に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において、第三者とはいわゆる背信的悪意者を含まないものとする。
1 不動産売買契約に基づく所有権移転登記がなされた後に、売主が当該契約に係る意思表示を詐欺によるものとして適法に取り消した場合、売主は、その旨の登記をしなければ、当該取消後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。
正しい。本肢記述のとおり(民法第177条、判例)。
2 不動産売買契約に基づく所有権移転登記がなされた後に、売主が当該契約を適法に解除した場合、売主は、その旨の登記をしなければ、当該契約の解除後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。
正しい。本肢記述のとおり(民法第177条、判例)。
3 甲不動産につき兄と弟が各自2分の1の共有持分で共同相続した後に、兄が弟に断ることなく単独で所有権を相続取得した旨の登記をした場合、弟は、その共同相続の登記をしなければ、共同相続後に甲不動産を兄から取得して所有権移転登記を経た第三者に自己の持分権を対抗できない。
誤り。共同相続人は、共同相続した旨の登記がなくても自己の持分の取得を対抗できる(民法第177条、判例)。
4 取得時効の完成により乙不動産の所有権を適法に取得した者は、その旨を登記しなければ、時効完成後に乙不動産を旧所有者から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。
正しい。本肢記述のとおり(民法第177条、判例)。

 

【問 13】 Aが所有者として登記されている甲土地上に、Bが所有者として登記されている乙建物があり、CがAから甲土地を購入した場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Bが甲土地を自分の土地であると判断して乙建物を建築していた場合であっても、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できない場合がある。
正しい。時効による取得の場合や権利濫用に該当する場合などが該当する(民法第177条、判例)。

2005年(平成17年)

【問 8】 Aは、自己所有の甲地をBに売却し、代金を受領して引渡しを終えたが、AからBに対する所有権移転登記はまだ行われていない。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Aの死亡によりCが単独相続し、甲地について相続を原因とするAからCへの所有権移転登記がなされた場合、Bは、自らへの登記をしていないので、甲地の所有権をCに対抗できない。
誤り。Cは売主Aの相続人、Bは買主として当事者の関係にあり、対抗関係には立たない(民法第177条、第896条)。
2 Aの死亡によりCが単独相続し、甲地について相続を原因とするAからCへの所有権移転登記がなされた後、CがDに対して甲地を売却しその旨の所有権登記がなされた場合、Bは、自らへの登記をしていないので、甲地の所有権をDに対抗できない。
正しい。本肢記述のとおり(民法第177条、判例)。

2004年(平成16年)

【問 3】 Aは、自己所有の建物をBに売却したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 Cが何らの権原なくこの建物を不法占有している場合、Bは、Cに対し、この建物の所有権を対抗でき、明渡しを請求できる。
正しい。不法占拠者には登記なくして対抗できる(民法第177条)。
3 この建物がAとEとの持分2分の1ずつの共有であり、Aが自己の持分をBに売却した場合、Bは、Eに対し、この建物の持分の取得を対抗できない。
正しい。Aの持分を譲り受けたBは、譲渡人A以外の共有者Eに対しては、登記がなければ対抗することができない(民法第177条、判例)。
4 Aはこの建物をFから買い受け、FからAに対する所有権移転登記がまだ行われていない場合、Bは、Fに対し、この建物の所有権を対抗できる。
正しい。FはAの前の所有者(前主)としてBとは対抗関係にはない(民法第176条、第177条、判例)。

 

【問 9】 AはBに甲建物を売却し、AからBに対する所有権移転登記がなされた。AB間の売買契約の解除と第三者との関係に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
4 AがAB間の売買契約を適法に解除したが、AからBに対する甲建物の所有権移転登記を抹消する前に、Bが甲建物をFに賃貸し引渡しも終えた場合、Aは、適法な解除後に設定されたこの賃借権の消滅をFに主張できる。
誤り。Fは契約解除後の第三者にあたる。この場合AとFは対抗関係になる。Fは建物の引渡しを受けており対抗要件を満たしている(民法第177条、借地借家法第31条第1項、判例)。

2003年(平成15年)

【問 3】 Aは、自己所有の甲地をBに売却し引き渡したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 Cが、AB間の売買の事実を知らずにAから甲地を買い受け、所有権移転登記を得た場合、CはBに対して甲地の所有権を主張することができる。
正しい。登記の先後によりその所有権を決する(民法第177条、判例)。
2 Dが、Bを欺き著しく高く売りつける目的で、Bが所有権移転登記を行っていないことに乗じて、Aから甲地を買い受け所有権移転登記を得た場合、DはBに対して甲地の所有権を主張することができない。
正しい。背信的悪意者には登記なくして対抗できる(民法第177条、判例)。
3 Eが、甲地に抵当権を設定して登記を得た場合であっても、その後Bが所有権移転登記を得てしまえば、以後、EはBに対して甲地に抵当権を設定したことを主張することができない。
誤り。Eの抵当権の登記の方が、AB間の売買より先なので、EはBに対して抵当権を設定したことを主張することができる(民法第177条)。
4 AとFが、通謀して甲地をAからFに仮装譲渡し、所有権移転登記を得た場合、Bは登記がなくとも、Fに対して甲地の所有権を主張することができる。
正しい。Fは無権利者であり、Bは登記がなくても対抗できる(民法第94条第1項、第177条、判例)。

 

【問 12】 Aが死亡し、それぞれ3分の1の相続分を持つAの子B、C及びD(他に相続人はいない。 )が、全員、単純承認し、これを共同相続した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 相続財産である土地につき、遺産分割協議前に、Bが、CとDの同意なくB名義への所有権移転登記をし、これを第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、CとDは、自己の持分を登記なくして、その第三者に対抗できる。
正しい。共同相続では、相続人は自己の相続分を登記なくして第三者に対抗できる(民法第177条、第898条、判例)。
2 相続財産である土地につき、B、C及びDが持分各3分の1の共有相続登記をした後、遺産分割協議によりBが単独所有権を取得した場合、その後にCが登記上の持分3分の1を第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、Bは、単独所有権を登記なくして、その第三者に対抗できる。
誤り。遺産分割で法定相続分の共有持分を超えて取得した場合、遺産分割時に新たな持分の移転があったものとみなし、第三者との間では対抗関係になるため、対抗要件としての登記が必要(民法第177条、判例)。

2002年(平成14年)

【問 2】 AがBの代理人としてCとの間で、B所有の土地の売買契約を締結する場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
4 AがBに無断でCと売買契約をしたが、Bがそれを知らないでDに売却して移転登記をした後でも、BがAの行為を追認すれば、DはCに所有権取得を対抗できなくなる。
誤り。Dは移転登記を得ているので、Cに土地の所有権の取得を主張することができる(民法第177条)。

 

【問 4】 Aは、自己所有の甲土地の一部につき、通行目的で、隣地乙土地の便益に供する通行地役権設定契約(地役権の付従性について別段の定めはない。)を、乙土地所有者Bと締結した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
1 この通行地役権の設定登記をしないまま、Aが、甲土地をCに譲渡し、所有権移転登記を経由した場合、Cは、通路として継続的に使用されていることが客観的に明らかであり、かつ、通行地役権があることを知っていたときでも、Bに対して、常にこの通行地役権を否定できる。
誤り。通行地役権が未登記のまま承役地が譲渡されても、「承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることが、位置・形状・構造などの物理的状況から客観的に明らかであること」、「譲受人がそのことを認識していたか、または認識することが可能であったこと」の二つが成り立つときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者にはあたらない(民法第177条、第280条、判例)。

2001年(平成13年)

【問 5】 AからB、BからCに、甲地が、順次売却され、AからBに対する所有権移転登記がなされた。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 Aが甲地につき全く無権利の登記名義人であった場合、真の所有者Dが所有権登記をBから遅滞なく回復する前に、Aが無権利であることにつき善意のCがBから所有権移転登記を受けたとき、Cは甲地の所有権をDに対抗できる。
誤り。真の所有者Dは所有権登記をBから回復する前であっても、Cに対抗できる(民法第177条)。
3 BからCへの売却前に、AがAB間の契約を適法に解除して所有権を取り戻した場合、Aが解除を理由にして所有権登記をBから回復する前に、その解除につき善意のCがBから甲地を購入し、かつ、所有権移転登記を受けたときは、Cは甲地の所有権をAに対抗できる。
正しい。Cは登記を受けているので甲地の所有権をAに対抗できる。なお、Cの善意・悪意は関係ない(民法第177条、判例)。
4 BからCへの売却前に、取得時効の完成により甲地の所有権を取得したEがいる場合、Eがそれを理由にして所有権登記をBから取得する前に、Eの取得時効につき善意のCがBから甲地を購入し、かつ、所有権移転登記を受けたときは、Cは甲地の所有権をEに対抗できる。
正しい。CはEの時効完成後の第三者にあたり、登記を備えているので、CはEに対抗できる(民法第177条、判例)。

 

【問 25〕 A所有の都市計画法による市街化区域内の甲地(面積250平方メートル)をBが取得した場合における次の記述のうち、正しいものはどれか。
3 甲地にA所有の住宅が建っているとき、BがAに対してこれを除却するよう求めるためには、民法の規定によると、Bは、甲地の所有権移転登記を完了していなければならない。
誤り。AとBは売買契約の当事者であり、対抗関係にはたたない。したがって、Bは、甲地の所有権移転登記を完了していなくても、Aに対して、住宅の除却を求めることができる(民法第176条、第177条)。

2000年(平成12年)

【問 4】 Aが、債権者の差押えを免れるため、Bと通謀して、A所有地をBに仮装譲渡する契約をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
3 DがAからこの土地の譲渡を受けた場合には、所有権移転登記を受けていないときでも、Dは、Bに対して、その所有権を主張することができる。
正しい。無権利者Bに対しては、Dは登記がなくても対抗できる(民法第94条第1項、第177条)。
4 Eが、AB間の契約の事情につき善意無過失で、Bからこの土地の譲渡を受け、所有権移転登記を受けていない場合で、Aがこの土地をFに譲渡したとき、Eは、Fに対して、その所有権を主張することができる。
誤り。EとFは対抗関係になり、Eは登記を備えていないのでFに対抗できない(民法第94条第2項、第177条、判例)。

1998年(平成10年)

【問 1】 Aの所有する土地をBが取得したが、Bはまだ所有権移転登記を受けていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、Bが当該土地の所有権を主張できない相手は、次の記述のうちどれか。
1 Aから当該土地を賃借し、その上に自己名義で保存登記をした建物を所有している者
主張できない。借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる(借地借家法第10条第1項)。Aから当該土地を賃借し、その上に自己名義で保存登記をした建物を所有している者は、この借地借家法の対抗力を有している。この借地人に対して、BがAから賃貸人の地位を取得したことを対抗するには、その土地の所有権移転登記が必要である(民法第177条)。
2 Bが移転登記を受けていないことに乗じ、Bに高値で売りつけ不当な利益を得る目的でAをそそのかし、Aから当該土地を購入して移転登記を受けた者
主張できる。本肢の者は、いわゆる背信的悪意者であり、Bは登記がなくても当該土地の所有権を主張することができる(民法第177条、判例)。
3 当該土地の不法占拠者
主張できる。Bは、登記がなくても、不法占拠者に自らの所有権を主張できる(民法第177条、判例)。
4 Bが当該土地を取得した後で、移転登記を受ける前に、Aが死亡した場合におけるAの相続人
主張できる。Aの相続人は、被相続人Aの一切の権利義務を承継しており、Aの売主としての地位も承継している(つまり、Aの相続人はAと同じと考えればよい)。したがって、Bは登記なくしてAの相続人に対抗できる(民法第177条、第896条)。

 

【問 2】 所有の意思をもって、平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有しているBの取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 DがBの取得時効完成前にAから甲土地を買い受けた場合には、Dの登記がBの取得時効完成の前であると後であるとを問わず、Bは,登記がなくても、時効による甲土地の所有権の取得をDに対抗することができる。
正しい。本肢のDは時効完成前の第三者にあたるため、BとDは対抗関係に立たず、Bは、登記がなくてもDに対して所有権を主張することができる(民法第177条、判例)。Dの登記がBの取得時効完成の前か後かは関係なく、Dの甲土地の取得の時期で判断すればよい。

1997年(平成9年)

【問 6】 物権変動に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Aが、Bに土地を譲渡して登記を移転した後、詐欺を理由に売買契約を取り消した場合で、Aの取消し後に、BがCにその土地を譲渡して登記を移転したとき、Aは、登記なしにCに対して土地の所有権を主張できる。
誤り。本肢の場合、Cは取消し後の第三者にあたり、AとCとは対抗関係となる。したがって、Aは、登記なしにCに対して土地の所有権を主張することができない(民法第177条、判例)。
2 DとEが土地を共同相続した場合で、遺産分割前にDがその土地を自己の単独所有であるとしてD単独名義で登記し、Fに譲渡して登記を移転したとき、Eは、登記なしにFに対して自己の相続分を主張できる。
正しい。共同相続人は、共同相続した旨の登記がなくても自己の持分の取得を対抗できる(民法第177条、判例)。
3 GがHに土地を譲渡した場合で、Hに登記を移転する前に、Gが死亡し、Iがその土地の特定遺贈を受け、登記の移転も受けたとき、Hは、登記なしにIに対して土地の所有権を主張できる。
誤り。本肢のHとIは対抗関係になり、先に登記を備えたIが、所有権の主張をすることができる(民法第177条、判例)。
4 Jが、K所有の土地を占有し取得時効期間を経過した場合で、時効の完成後に、Kがその土地をLに譲渡して登記を移転したとき、Jは、登記なしにLに対して当該時効による土地の取得を主張できる。
誤り。時効完成後の第三者LとJは対抗関係となり、先に登記を備えたLが、所有権の主張をすることができる(民法第177条、判例)。

1996年(平成8年)

【問 3】 Aの所有する土地について、AB間で、代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転する旨約定して締結された売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 AからBへの所有権移転登記が完了していない場合は、BがAに代金全額を支払った後であっても、契約の定めにかかわらず、Bは,Aに対して所有権の移転を主張することができない。
誤り。AとBは、売買契約の当事者であり、代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転している(民法第176条、第177条)。
2 BがAに代金全額を支払った後、AがBへの所有権移転登記を完了する前に死亡し、CがAを相続した場合、Bは、Cに対して所有権の移転を主張することができる。
正しい。相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するため、Bは、Cに対して所有権の移転を主張することができる(民法第177条、第896条)。
3 Aが、Bとの売買契約締結前に、Dとの間で本件土地を売却する契約を締結してDから代金全額を受領していた場合、AからDへの所有権移転登記が完了していなくても、Bは、Aから所有権を取得することはできない。
誤り。BD間は、先に登記をした方が所有権を主張することができる(民法第177条)。
4 EがAからこの土地を賃借して、建物を建てその登記をしている場合、BがAに代金全額を支払った後であれば、AからBへの所有権移転登記が完了していなくても、Bは、Eに対して所有権の移転を主張することができる。
誤り。AからBへの所有権移転登記が完了していなければ、Bは、Eに対して所有権の移転を主張することができない(民法第177条、判例)。

 

【問 5】 A所有の土地について、AがBに、BがCに売り渡し、AからBへ、BからCへそれぞれ所有権移転登記がなされた場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
3 Cが移転登記を受ける際に、AB間の売買契約に解除原因が生じていることを知っていた場合で、当該登記の後にAによりAB間の売買契約が解除されたとき、Cは、Aに対して土地の所有権の取得を対抗できない。
誤り。Cは、解除前の第三者にあたり、CとAの優劣は登記の先後による。本肢では、Cが登記を備えているので、Cは、Aに対して土地の所有権の取得を対抗することができる(民法第177条、第545条第1項)。
4 Cが移転登記を受ける際に、既にAによりAB間の売買契約が解除されていることを知っていた場合、Cは、Aに対して土地の所有権の取得を対抗できない。
誤り。Cは、解除後の第三者にあたり、CとAの優劣は登記の先後による。本肢では、Cが登記を備えているので、Cは、Aに対して土地の所有権の取得を対抗することができる(民法第177条)。

1995年(平成7年)

【問 2】 Aの所有する土地をBが取得した後、Bが移転登記をする前に、CがAから登記を移転した場合に関する次の記述のうち、民法及び不動産登記法の規定並びに判例によれば、BがCに対して登記がなければ土地の所有権を主張できないものはどれか。
1 BがAから購入した後、AがCに仮装譲渡し、登記をC名義に移転した場合
主張できる。AのCに対する仮装譲渡は通謀虚偽表示で無効となる。このため、Cは無権利者となるので、Bは登記なくしてCに対抗することができる(民法第94条第1項、第177条)。
2 BがAから購入した後、CがBを強迫して登記の申請を妨げ、CがAから購入して登記をC名義に移転した場合
主張できる。詐欺又は強迫によって登記の申請を妨げた第三者は、その登記がないことを主張することができない(不動産登記法第5条第1項)。したがって、Bは登記なくしてCに対抗することができる(民法第177条)。
3 BがAから購入し、登記手続きをCに委任したところ、Cが登記をC名義に移転した場合
主張できる。他人のために登記を申請する義務を負う第三者は、その登記がないことを主張することができない(不動産登記法第5条第2項)。したがって、Bは登記なくしてCに対抗することができる(民法第177条)。
4 Bの取得時効が完成した後、AがCに売却し、登記をC名義に移転した場合
主張できない。Cは、時効完成後の第三者にあたり、BとCは先に登記を備えた方が権利を主張することができる(民法第177条)。本肢では、Cが登記を備えており、BはCに対して土地の所有権を主張することができない。

 

【問 7】 AがBの所有地を賃借して、建物を建てその登記をしている場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 EがBからその土地の譲渡を受けた場合、Eは、登記を移転していなくても賃貸人たる地位の取得をAに対抗することができる。
誤り。本肢のEは、登記を移転しなければ賃貸人たる地位の取得をAに対抗することができない(民法第177条、判例)。

1992年(平成4年)

【問 4】 AがBの所有地を長期間占有している場合の時効取得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
3 Aが善意無過失で占有を開始し、所有の意思をもって、平穏かつ公然に7年間占有を続けた後、BがDにその土地を売却し、所有権移転を完了しても、Aは、その後3年間占有を続ければ、その土地の所有権を時効取得し、Dに対抗することができる。
正しい。本肢記述のとおり。時効完成前の第三者Dには登記がなくても対抗することができる(民法第162条、第177条)。

1991年(平成3年)

【問 4】 Aが所有する土地について次に掲げる事実が生じた場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 AがBから土地を譲り受けたが、その未登記の間に、Cがその事情を知りつつ、Bからその土地を譲り受けて、C名義の所有権移転登記をした場合、Aは、その所有権をCに対抗することができない。
正しい。AとCは二重譲渡の関係になり、先に登記をしたCに対しては、Aは、その所有権を対抗することができない(民法第177条)。
2 Aの所有地がAからD、DからEへと売り渡され、E名義の所有権移転登記がなされた後でも、AがDの債務不履行に基づきAD間の売買契約を解除した場合、Aは、その所有権をEに対抗することができる。
誤り。Eは、解除前の第三者にあたるが、登記を備えているので、Aは、その所有権をEに対抗することができない(民法第177条、第545条第1項)。
3 Aの所有地にFがAに無断でF名義の所有権移転登記をし、Aがこれを知りながら放置していたところ、FがF所有地として善意無過失のGに売り渡し、GがG名義の所有権移転登記をした場合、Aは、その所有権をGに対抗することができない。
正しい。Fは本来無権利者であるが、Aがこれを知りながら放置していたため、虚偽表示の規定が類推適用される結果、Aは、善意の第三者Gに、この無効を主張することはできない(民法第94条、第177条、判例)。
4 AがHから土地を譲り受けたが、その未登記の間に、Iが権原のないJからその土地を賃借して、建物を建築し、建物保存登記を行った場合、Aは、Iにその土地の明渡し及び建物の収去を請求することができる。
正しい。IもJも無権利者であり、Aは、登記がなくても、Iにその土地の明渡し及び建物の収去を請求することができる(民法第177条)。

1989年(平成1年)

【問 3】 A所有の土地が、AからB、BからCへと売り渡され、移転登記も完了している。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
3 Aは、Bが売買代金を支払わないので、その売買契約を解除した場合、そのことを悪意のCに対し対抗することができる。
誤り。AとCの関係は、Cの善意・悪意で決するのではなく、登記の有無で決する(民法第177条、第545条第1項)。

契約当事者と登記

【2004 問 3】 Aは、自己所有の建物をBに売却したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
4 Aはこの建物をFから買い受け、FからAに対する所有権移転登記がまだ行われていない場合、Bは、Fに対し、この建物の所有権を対抗できる。
正しい。FはAの前の所有者(前主)としてBとは対抗関係にはない(民法第176条、第177条、判例)。
【2001 問 25〕 A所有の都市計画法による市街化区域内の甲地(面積250平方メートル)をBが取得した場合における次の記述のうち、正しいものはどれか。
3 甲地にA所有の住宅が建っているとき、BがAに対してこれを除却するよう求めるためには、民法の規定によると、Bは、甲地の所有権移転登記を完了していなければならない。
誤り。AとBは売買契約の当事者であり、対抗関係にはたたない。したがって、Bは、甲地の所有権移転登記を完了していなくても、Aに対して、住宅の除却を求めることができる(民法第176条、第177条)。
【1996 問 3】 Aの所有する土地について、AB間で、代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転する旨約定して締結された売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 AからBへの所有権移転登記が完了していない場合は、BがAに代金全額を支払った後であっても、契約の定めにかかわらず、Bは,Aに対して所有権の移転を主張することができない。
誤り。AとBは、売買契約の当事者であり、代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転している(民法第176条、第177条)。

無権利者や不法占拠者と登記

【2008 問 2】 所有権がAからBに移転している旨が登記されている甲土地の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 CはBとの間で売買契約を締結して所有権移転登記をしたが、甲土地の真の所有者はAであって、Bが各種の書類を偽造して自らに登記を移していた場合、Aは所有者であることをCに対して主張できる。
正しい。Bは無権利者であり、無権利者から移転登記を受けたCもまた無権利者である。無権利者に対しては真実の所有者Aは登記がなくても対抗することができる(民法第177条)。
【2007 問 3】 Aが所有者として登記されている甲土地の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 Aと売買契約を締結して所有権を取得したEは、所有権の移転登記を備えていない場合であっても、正当な権原なく甲土地を占有しているFに対し、所有権を主張して甲土地の明渡しを請求することができる。
正しい。本肢記述のとおり(民法第177条、判例)。
【2004 問 3】 Aは、自己所有の建物をBに売却したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 Cが何らの権原なくこの建物を不法占有している場合、Bは、Cに対し、この建物の所有権を対抗でき、明渡しを請求できる。
正しい。不法占拠者には登記なくして対抗できる(民法第177条)。
【2003 問 3】 Aは、自己所有の甲地をBに売却し引き渡したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
4 AとFが、通謀して甲地をAからFに仮装譲渡し、所有権移転登記を得た場合、Bは登記がなくとも、Fに対して甲地の所有権を主張することができる。
正しい。Fは無権利者であり、Bは登記がなくても対抗できる(民法第94条第1項、第177条、判例)。
【2001 問 5】 AからB、BからCに、甲地が、順次売却され、AからBに対する所有権移転登記がなされた。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 Aが甲地につき全く無権利の登記名義人であった場合、真の所有者Dが所有権登記をBから遅滞なく回復する前に、Aが無権利であることにつき善意のCがBから所有権移転登記を受けたとき、Cは甲地の所有権をDに対抗できる。
誤り。真の所有者Dは所有権登記をBから回復する前であっても、Cに対抗できる(民法第177条)。
【2000 問 4】 Aが、債権者の差押えを免れるため、Bと通謀して、A所有地をBに仮装譲渡する契約をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
3 DがAからこの土地の譲渡を受けた場合には、所有権移転登記を受けていないときでも、Dは、Bに対して、その所有権を主張することができる。
正しい。無権利者Bに対しては、Dは登記がなくても対抗できる(民法第94条第1項、第177条)。
4 Eが、AB間の契約の事情につき善意無過失で、Bからこの土地の譲渡を受け、所有権移転登記を受けていない場合で、Aがこの土地をFに譲渡したとき、Eは、Fに対して、その所有権を主張することができる。
誤り。EとFは対抗関係になり、Eは登記を備えていないのでFに対抗できない(民法第94条第2項、第177条、判例)。
【1998 問 1】 Aの所有する土地をBが取得したが、Bはまだ所有権移転登記を受けていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、Bが当該土地の所有権を主張できない相手は、次の記述のうちどれか。
3 当該土地の不法占拠者
主張できる。Bは、登記がなくても、不法占拠者に自らの所有権を主張できる(民法第177条、判例)。
【1995 問 2】 Aの所有する土地をBが取得した後、Bが移転登記をする前に、CがAから登記を移転した場合に関する次の記述のうち、民法及び不動産登記法の規定並びに判例によれば、BがCに対して登記がなければ土地の所有権を主張できないものはどれか。
1 BがAから購入した後、AがCに仮装譲渡し、登記をC名義に移転した場合
主張できる。AのCに対する仮装譲渡は通謀虚偽表示で無効となる。このため、Cは無権利者となるので、Bは登記なくしてCに対抗することができる(民法第94条第1項、第177条)。
【1991 問 4】 Aが所有する土地について次に掲げる事実が生じた場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
3 Aの所有地にFがAに無断でF名義の所有権移転登記をし、Aがこれを知りながら放置していたところ、FがF所有地として善意無過失のGに売り渡し、GがG名義の所有権移転登記をした場合、Aは、その所有権をGに対抗することができない。
正しい。Fは本来無権利者であるが、Aがこれを知りながら放置していたため、虚偽表示の規定が類推適用される結果、Aは、善意の第三者Gに、この無効を主張することはできない(民法第94条、第177条、判例)。
4 AがHから土地を譲り受けたが、その未登記の間に、Iが権原のないJからその土地を賃借して、建物を建築し、建物保存登記を行った場合、Aは、Iにその土地の明渡し及び建物の収去を請求することができる。
正しい。IもJも無権利者であり、Aは、登記がなくても、Iにその土地の明渡し及び建物の収去を請求することができる(民法第177条)。

二重譲渡と登記

【2012 問 6】 A所有の甲土地についての所有権移転登記と権利の主張に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 Aが甲土地をFとGとに対して二重に譲渡してFが所有権移転登記を備えた場合に、AG間の売買契約の方がAF間の売買契約よりも先になされたことをGが立証できれば、Gは、登記がなくても、Fに対して自らが所有者であることを主張することができる。
誤り。土地が二重に譲渡された場合、譲受人間の優劣は、契約締結時期の先後ではなく、登記の先後によって決せられる(民法第177条、判例)。したがって、AG間の売買契約の方がAF間の売買契約よりも先になされたことをGが立証できたとしても、Gは、登記を備えなければ、Fに対して自らが所有者であることを主張することができない。
【2010 問 4】 AがBから甲土地を購入したところ、甲土地の所有者を名のるCがAに対して連絡してきた。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 CもBから甲土地を購入しており、その売買契約書の日付とBA間の売買契約書の日付が同じである場合、登記がなくても、契約締結の時刻が早い方が所有権を主張することができる。
誤り。不動産に関する物権の得喪及び変更は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない(民法第177条)。契約締結の時刻は関係ない。
【2007 問 3】 Aが所有者として登記されている甲土地の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
4 Aを所有者とする甲土地につき、AがGとの間で10月1日に、Hとの間で10月10日に、それぞれ売買契約を締結した場合、G、H共に登記を備えていないときには、先に売買契約を締結したGがHに対して所有権を主張することができる。
誤り。G、Hのいずれか登記を備えた方が所有権を主張できる(民法第177条)。
【2003 問 3】 Aは、自己所有の甲地をBに売却し引き渡したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 Cが、AB間の売買の事実を知らずにAから甲地を買い受け、所有権移転登記を得た場合、CはBに対して甲地の所有権を主張することができる。
正しい。登記の先後によりその所有権を決する(民法第177条、判例)。
【2002 問 2】 AがBの代理人としてCとの間で、B所有の土地の売買契約を締結する場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
4 AがBに無断でCと売買契約をしたが、Bがそれを知らないでDに売却して移転登記をした後でも、BがAの行為を追認すれば、DはCに所有権取得を対抗できなくなる。
誤り。Dは移転登記を得ているので、Cに土地の所有権の取得を主張することができる(民法第177条)。
【1996 問 3】 Aの所有する土地について、AB間で、代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転する旨約定して締結された売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 Aが、Bとの売買契約締結前に、Dとの間で本件土地を売却する契約を締結してDから代金全額を受領していた場合、AからDへの所有権移転登記が完了していなくても、Bは、Aから所有権を取得することはできない。
誤り。BD間は、先に登記をした方が所有権を主張することができる(民法第177条)。

悪意者または背信的悪意者と登記

【2012 問 6】 A所有の甲土地についての所有権移転登記と権利の主張に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
4 Aが甲土地をHとIとに対して二重に譲渡した場合において、Hが所有権移転登記を備えない間にIが甲土地を善意のJに譲渡してJが所有権移転登記を備えたときは、Iがいわゆる背信的悪意者であっても、Hは、Jに対して自らが所有者であることを主張することができない。
正しい。背信的悪意者から土地を譲り受け登記を備えたJは、自らが背信的悪意者と評価されない限り、当該土地の所有権の取得を第三者(H)に対抗することができる(民法第177条、判例)。
【2003 問 3】 Aは、自己所有の甲地をBに売却し引き渡したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
2 Dが、Bを欺き著しく高く売りつける目的で、Bが所有権移転登記を行っていないことに乗じて、Aから甲地を買い受け所有権移転登記を得た場合、DはBに対して甲地の所有権を主張することができない。
正しい。背信的悪意者には登記なくして対抗できる(民法第177条、判例)。
【1998 問 1】 Aの所有する土地をBが取得したが、Bはまだ所有権移転登記を受けていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、Bが当該土地の所有権を主張できない相手は、次の記述のうちどれか。
2 Bが移転登記を受けていないことに乗じ、Bに高値で売りつけ不当な利益を得る目的でAをそそのかし、Aから当該土地を購入して移転登記を受けた者
主張できる。本肢の者は、いわゆる背信的悪意者であり、Bは登記がなくても当該土地の所有権を主張することができる(民法第177条、判例)。
【1995 問 2】 Aの所有する土地をBが取得した後、Bが移転登記をする前に、CがAから登記を移転した場合に関する次の記述のうち、民法及び不動産登記法の規定並びに判例によれば、BがCに対して登記がなければ土地の所有権を主張できないものはどれか。
2 BがAから購入した後、CがBを強迫して登記の申請を妨げ、CがAから購入して登記をC名義に移転した場合
主張できる。詐欺又は強迫によって登記の申請を妨げた第三者は、その登記がないことを主張することができない(不動産登記法第5条第1項)。したがって、Bは登記なくしてCに対抗することができる(民法第177条)。
3 BがAから購入し、登記手続きをCに委任したところ、Cが登記をC名義に移転した場合
主張できる。他人のために登記を申請する義務を負う第三者は、その登記がないことを主張することができない(不動産登記法第5条第2項)。したがって、Bは登記なくしてCに対抗することができる(民法第177条)。
【1991 問 4】 Aが所有する土地について次に掲げる事実が生じた場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 AがBから土地を譲り受けたが、その未登記の間に、Cがその事情を知りつつ、Bからその土地を譲り受けて、C名義の所有権移転登記をした場合、Aは、その所有権をCに対抗することができない。
正しい。AとCは二重譲渡の関係になり、先に登記をしたCに対しては、Aは、その所有権を対抗することができない(民法第177条)。

抵当権と登記

【2004 問 4】 AがBとの間で、CのBに対する債務を担保するためにA所有の甲土地に抵当権を設定する場合と根抵当権を設定する場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
2 抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には登記が必要であるが、根抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には、登記に加えて、債務者Cの異議を留めない承諾が必要である。
誤り。抵当権も根抵当権も設定した旨を第三者に対抗する場合には登記が必要である(民法第177条)。根抵当権の場合に限り、「登記に加えて、債務者Cの異議を留めない承諾が必要である。」という規定はない。
【2003 問 3】 Aは、自己所有の甲地をBに売却し引き渡したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
3 Eが、甲地に抵当権を設定して登記を得た場合であっても、その後Bが所有権移転登記を得てしまえば、以後、EはBに対して甲地に抵当権を設定したことを主張することができない。
誤り。Eの抵当権の登記の方が、AB間の売買より先なので、EはBに対して抵当権を設定したことを主張することができる(民法第177条)。

共有と登記

【2004 問 3】 Aは、自己所有の建物をBに売却したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
3 この建物がAとEとの持分2分の1ずつの共有であり、Aが自己の持分をBに売却した場合、Bは、Eに対し、この建物の持分の取得を対抗できない。
正しい。Aの持分を譲り受けたBは、譲渡人A以外の共有者Eに対しては、登記がなければ対抗することができない(民法第177条、判例)。

地役権と登記

【2002 問 4】 Aは、自己所有の甲土地の一部につき、通行目的で、隣地乙土地の便益に供する通行地役権設定契約(地役権の付従性について別段の定めはない。)を、乙土地所有者Bと締結した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
1 この通行地役権の設定登記をしないまま、Aが、甲土地をCに譲渡し、所有権移転登記を経由した場合、Cは、通路として継続的に使用されていることが客観的に明らかであり、かつ、通行地役権があることを知っていたときでも、Bに対して、常にこの通行地役権を否定できる。
誤り。通行地役権が未登記のまま承役地が譲渡されても、「承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることが、位置・形状・構造などの物理的状況から客観的に明らかであること」、「譲受人がそのことを認識していたか、または認識することが可能であったこと」の二つが成り立つときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者にはあたらない(民法第177条、第280条、判例)。

借地上の建物の所有者等

【2012 問 6】 A所有の甲土地についての所有権移転登記と権利の主張に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
2 甲土地の賃借人であるDが、甲土地上に登記ある建物を有する場合に、Aから甲土地を購入したEは、所有権移転登記を備えていないときであっても、Dに対して、自らが賃貸人であることを主張することができる。
誤り。土地の賃貸人Aから当該土地を購入したEは、所有権移転登記を備えなければ、賃借人Dに対して、自らが賃貸人であることを主張することができない(民法第177条、判例)。
【1998 問 1】 Aの所有する土地をBが取得したが、Bはまだ所有権移転登記を受けていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、Bが当該土地の所有権を主張できない相手は、次の記述のうちどれか。
1 Aから当該土地を賃借し、その上に自己名義で保存登記をした建物を所有している者
主張できない。借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる(借地借家法第10条第1項)。Aから当該土地を賃借し、その上に自己名義で保存登記をした建物を所有している者は、この借地借家法の対抗力を有している。この借地人に対して、BがAから賃貸人の地位を取得したことを対抗するには、その土地の所有権移転登記が必要である(民法第177条)。
【1996 問 3】 Aの所有する土地について、AB間で、代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転する旨約定して締結された売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
4 EがAからこの土地を賃借して、建物を建てその登記をしている場合、BがAに代金全額を支払った後であれば、AからBへの所有権移転登記が完了していなくても、Bは、Eに対して所有権の移転を主張することができる。
誤り。AからBへの所有権移転登記が完了していなければ、Bは、Eに対して所有権の移転を主張することができない(民法第177条、判例)。
【1995 問 7】 AがBの所有地を賃借して、建物を建てその登記をしている場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 EがBからその土地の譲渡を受けた場合、Eは、登記を移転していなくても賃貸人たる地位の取得をAに対抗することができる。
誤り。本肢のEは、登記を移転しなければ賃貸人たる地位の取得をAに対抗することができない(民法第177条、判例)。

取消し前・後の第三者と登記

【2011 問 1】 A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 AがBにだまされたとして詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消した後、Bが甲土地をAに返還せずにDに転売してDが所有権移転登記を備えても、AはDから甲土地を取り戻すことができる。
誤り。Dは取消し後の第三者にあたり、AとDは対抗関係となる。Dが登記を備えているのでAはDから甲土地を取戻すことはできない(民法第177条、判例)。
【2010 問 4】 AがBから甲土地を購入したところ、甲土地の所有者を名のるCがAに対して連絡してきた。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
2 甲土地はCからB、BからAと売却されており、CB間の売買契約がBの強迫により締結されたことを理由として取り消された場合には、BA間の売買契約締結の時期にかかわらず、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる。
誤り。CB間の売買契約が取消される前にBA間の売買契約が締結された場合、Aは取消し前の第三者にあたり、Cは登記がなくてもAに対し、所有権を主張することができる(民法第96条、判例)。一方、CB間の売買契約が取り消された後にBA間の売買契約が締結された場合、Aは取消し後の第三者にあたるため、CとAは対抗関係に立ち、Cは登記がなければAに対し、所有権を主張することができない(民法第177条、判例)。
【2007 問 6】 不動産の物権変動の対抗要件に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において、第三者とはいわゆる背信的悪意者を含まないものとする。
1 不動産売買契約に基づく所有権移転登記がなされた後に、売主が当該契約に係る意思表示を詐欺によるものとして適法に取り消した場合、売主は、その旨の登記をしなければ、当該取消後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。
正しい。本肢記述のとおり(民法第177条、判例)。
【1997 問 6】 物権変動に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Aが、Bに土地を譲渡して登記を移転した後、詐欺を理由に売買契約を取り消した場合で、Aの取消し後に、BがCにその土地を譲渡して登記を移転したとき、Aは、登記なしにCに対して土地の所有権を主張できる。
誤り。本肢の場合、Cは取消し後の第三者にあたり、AとCとは対抗関係となる。したがって、Aは、登記なしにCに対して土地の所有権を主張することができない(民法第177条、判例)。

契約解除前・後の第三者と登記

【2008 問 2】 所有権がAからBに移転している旨が登記されている甲土地の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 EはBとの間で売買契約を締結したが、BE間の売買契約締結の前にAがBの債務不履行を理由にAB間の売買契約を解除していた場合、Aが解除した旨の登記をしたか否かにかかわらず、Aは所有者であることをEに対して主張できる。
誤り。契約解除後の第三者EとAは、対抗関係となる。したがって、Aは登記をしなければ、所有者であることを主張することはできない(民法第177条)。
【2007 問 6】 不動産の物権変動の対抗要件に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において、第三者とはいわゆる背信的悪意者を含まないものとする。
2 不動産売買契約に基づく所有権移転登記がなされた後に、売主が当該契約を適法に解除した場合、売主は、その旨の登記をしなければ、当該契約の解除後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。
正しい。本肢記述のとおり(民法第177条、判例)。
【2004 問 9】 AはBに甲建物を売却し、AからBに対する所有権移転登記がなされた。AB間の売買契約の解除と第三者との関係に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
4 AがAB間の売買契約を適法に解除したが、AからBに対する甲建物の所有権移転登記を抹消する前に、Bが甲建物をFに賃貸し引渡しも終えた場合、Aは、適法な解除後に設定されたこの賃借権の消滅をFに主張できる。
誤り。Fは契約解除後の第三者にあたる。この場合AとFは対抗関係になる。Fは建物の引渡しを受けており対抗要件を満たしている(民法第177条、借地借家法第31条第1項、判例)。
【2001 問 5】 AからB、BからCに、甲地が、順次売却され、AからBに対する所有権移転登記がなされた。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
3 BからCへの売却前に、AがAB間の契約を適法に解除して所有権を取り戻した場合、Aが解除を理由にして所有権登記をBから回復する前に、その解除につき善意のCがBから甲地を購入し、かつ、所有権移転登記を受けたときは、Cは甲地の所有権をAに対抗できる。
正しい。Cは登記を受けているので甲地の所有権をAに対抗できる。なお、Cの善意・悪意は関係ない(民法第177条、判例)。
【1996 問 5】 A所有の土地について、AがBに、BがCに売り渡し、AからBへ、BからCへそれぞれ所有権移転登記がなされた場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
3 Cが移転登記を受ける際に、AB間の売買契約に解除原因が生じていることを知っていた場合で、当該登記の後にAによりAB間の売買契約が解除されたとき、Cは、Aに対して土地の所有権の取得を対抗できない。
誤り。Cは、解除前の第三者にあたり、CとAの優劣は登記の先後による。本肢では、Cが登記を備えているので、Cは、Aに対して土地の所有権の取得を対抗することができる(民法第177条、第545条第1項)。
4 Cが移転登記を受ける際に、既にAによりAB間の売買契約が解除されていることを知っていた場合、Cは、Aに対して土地の所有権の取得を対抗できない。
誤り。Cは、解除後の第三者にあたり、CとAの優劣は登記の先後による。本肢では、Cが登記を備えているので、Cは、Aに対して土地の所有権の取得を対抗することができる(民法第177条)。
【1991 問 4】 Aが所有する土地について次に掲げる事実が生じた場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
2 Aの所有地がAからD、DからEへと売り渡され、E名義の所有権移転登記がなされた後でも、AがDの債務不履行に基づきAD間の売買契約を解除した場合、Aは、その所有権をEに対抗することができる。
誤り。Eは、解除前の第三者にあたるが、登記を備えているので、Aは、その所有権をEに対抗することができない(民法第177条、第545条第1項)。
【1989 問 3】 A所有の土地が、AからB、BからCへと売り渡され、移転登記も完了している。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
3 Aは、Bが売買代金を支払わないので、その売買契約を解除した場合、そのことを悪意のCに対し対抗することができる。
誤り。AとCの関係は、Cの善意・悪意で決するのではなく、登記の有無で決する(民法第177条、第545条第1項)。

時効と登記

【2015 問 4】 A所有の甲土地を占有しているBによる権利の時効取得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 Aから甲土地を買い受けたCが所有権の移転登記を備えた後に、Bについて甲土地所有権の取得時効が完成した場合、Bは、Cに対し、登記がなくても甲土地の所有者であることを主張することができる。
正しい。時効の完成前に甲土地を買い受けたCに対しては、Bは、登記がなくても甲土地の所有者であることを主張することができる(民法第177条、最判S41.11.22)。
【2012 問 6】 A所有の甲土地についての所有権移転登記と権利の主張に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 甲土地につき、時効により所有権を取得したBは、時効完成前にAから甲土地を購入して所有権移転登記を備えたCに対して、時効による所有権の取得を主張することができない。
誤り。時効により土地の所有権を取得したBは、所有権移転登記を備えていないときであっても、時効完成前に当該土地を購入して登記を備えたCに対し、時効による所有権の取得を主張することができる(民法第177条、判例)。
【2010 問 4】 AがBから甲土地を購入したところ、甲土地の所有者を名のるCがAに対して連絡してきた。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 Cが時効により甲土地の所有権を取得した旨主張している場合、取得時効の進行中にBA間で売買契約及び所有権移転登記がなされ、その後に時効が完成しているときには、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる。
正しい。本肢のAは時効完成前の第三者にあたるため、CとAは対抗関係に立たず、Cは、登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる(民法第177条、判例)。
【2007 問 6】 不動産の物権変動の対抗要件に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において、第三者とはいわゆる背信的悪意者を含まないものとする。
4 取得時効の完成により乙不動産の所有権を適法に取得した者は、その旨を登記しなければ、時効完成後に乙不動産を旧所有者から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。
正しい。本肢記述のとおり(民法第177条、判例)。
【2007 問 13】 Aが所有者として登記されている甲土地上に、Bが所有者として登記されている乙建物があり、CがAから甲土地を購入した場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Bが甲土地を自分の土地であると判断して乙建物を建築していた場合であっても、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できない場合がある。
正しい。時効による取得の場合や権利濫用に該当する場合などが該当する(民法第177条、判例)。
【2001 問 5】 AからB、BからCに、甲地が、順次売却され、AからBに対する所有権移転登記がなされた。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
4 BからCへの売却前に、取得時効の完成により甲地の所有権を取得したEがいる場合、Eがそれを理由にして所有権登記をBから取得する前に、Eの取得時効につき善意のCがBから甲地を購入し、かつ、所有権移転登記を受けたときは、Cは甲地の所有権をEに対抗できる。
正しい。CはEの時効完成後の第三者にあたり、登記を備えているので、CはEに対抗できる(民法第177条、判例)。
【1998 問 2】 所有の意思をもって、平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有しているBの取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 DがBの取得時効完成前にAから甲土地を買い受けた場合には、Dの登記がBの取得時効完成の前であると後であるとを問わず、Bは,登記がなくても、時効による甲土地の所有権の取得をDに対抗することができる。
正しい。本肢のDは時効完成前の第三者にあたるため、BとDは対抗関係に立たず、Bは、登記がなくてもDに対して所有権を主張することができる(民法第177条、判例)。Dの登記がBの取得時効完成の前か後かは関係なく、Dの甲土地の取得の時期で判断すればよい。
【1997 問 6】 物権変動に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
4 Jが、K所有の土地を占有し取得時効期間を経過した場合で、時効の完成後に、Kがその土地をLに譲渡して登記を移転したとき、Jは、登記なしにLに対して当該時効による土地の取得を主張できる。
誤り。時効完成後の第三者LとJは対抗関係となり、先に登記を備えたLが、所有権の主張をすることができる(民法第177条、判例)。
【1995 問 2】 Aの所有する土地をBが取得した後、Bが移転登記をする前に、CがAから登記を移転した場合に関する次の記述のうち、民法及び不動産登記法の規定並びに判例によれば、BがCに対して登記がなければ土地の所有権を主張できないものはどれか。
4 Bの取得時効が完成した後、AがCに売却し、登記をC名義に移転した場合
主張できない。Cは、時効完成後の第三者にあたり、BとCは先に登記を備えた方が権利を主張することができる(民法第177条)。本肢では、Cが登記を備えており、BはCに対して土地の所有権を主張することができない。
【1992 問 4】 AがBの所有地を長期間占有している場合の時効取得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
3 Aが善意無過失で占有を開始し、所有の意思をもって、平穏かつ公然に7年間占有を続けた後、BがDにその土地を売却し、所有権移転を完了しても、Aは、その後3年間占有を続ければ、その土地の所有権を時効取得し、Dに対抗することができる。
正しい。本肢記述のとおり。時効完成前の第三者Dには登記がなくても対抗することができる(民法第162条、第177条)。

相続と登記

【2007 問 6】 不動産の物権変動の対抗要件に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において、第三者とはいわゆる背信的悪意者を含まないものとする。
3 甲不動産につき兄と弟が各自2分の1の共有持分で共同相続した後に、兄が弟に断ることなく単独で所有権を相続取得した旨の登記をした場合、弟は、その共同相続の登記をしなければ、共同相続後に甲不動産を兄から取得して所有権移転登記を経た第三者に自己の持分権を対抗できない。
誤り。共同相続人は、共同相続した旨の登記がなくても自己の持分の取得を対抗できる(民法第177条、判例)。
【2005 問 8】 Aは、自己所有の甲地をBに売却し、代金を受領して引渡しを終えたが、AからBに対する所有権移転登記はまだ行われていない。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Aの死亡によりCが単独相続し、甲地について相続を原因とするAからCへの所有権移転登記がなされた場合、Bは、自らへの登記をしていないので、甲地の所有権をCに対抗できない。
誤り。Cは売主Aの相続人、Bは買主として当事者の関係にあり、対抗関係には立たない(民法第177条、第896条)。
2 Aの死亡によりCが単独相続し、甲地について相続を原因とするAからCへの所有権移転登記がなされた後、CがDに対して甲地を売却しその旨の所有権登記がなされた場合、Bは、自らへの登記をしていないので、甲地の所有権をDに対抗できない。
正しい。本肢記述のとおり(民法第177条、判例)。
【2003 問 12】 Aが死亡し、それぞれ3分の1の相続分を持つAの子B、C及びD(他に相続人はいない。 )が、全員、単純承認し、これを共同相続した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 相続財産である土地につき、遺産分割協議前に、Bが、CとDの同意なくB名義への所有権移転登記をし、これを第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、CとDは、自己の持分を登記なくして、その第三者に対抗できる。
正しい。共同相続では、相続人は自己の相続分を登記なくして第三者に対抗できる(民法第177条、第898条、判例)。
2 相続財産である土地につき、B、C及びDが持分各3分の1の共有相続登記をした後、遺産分割協議によりBが単独所有権を取得した場合、その後にCが登記上の持分3分の1を第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、Bは、単独所有権を登記なくして、その第三者に対抗できる。
誤り。遺産分割で法定相続分の共有持分を超えて取得した場合、遺産分割時に新たな持分の移転があったものとみなし、第三者との間では対抗関係になるため、対抗要件としての登記が必要(民法第177条、判例)。
【1998 問 1】 Aの所有する土地をBが取得したが、Bはまだ所有権移転登記を受けていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、Bが当該土地の所有権を主張できない相手は、次の記述のうちどれか。
4 Bが当該土地を取得した後で、移転登記を受ける前に、Aが死亡した場合におけるAの相続人
主張できる。Aの相続人は、被相続人Aの一切の権利義務を承継しており、Aの売主としての地位も承継している(つまり、Aの相続人はAと同じと考えればよい)。したがって、Bは登記なくしてAの相続人に対抗できる(民法第177条、第896条)。
【1997 問 6】 物権変動に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
2 DとEが土地を共同相続した場合で、遺産分割前にDがその土地を自己の単独所有であるとしてD単独名義で登記し、Fに譲渡して登記を移転したとき、Eは、登記なしにFに対して自己の相続分を主張できる。
正しい。共同相続人は、共同相続した旨の登記がなくても自己の持分の取得を対抗できる(民法第177条、判例)。
3 GがHに土地を譲渡した場合で、Hに登記を移転する前に、Gが死亡し、Iがその土地の特定遺贈を受け、登記の移転も受けたとき、Hは、登記なしにIに対して土地の所有権を主張できる。
誤り。本肢のHとIは対抗関係になり、先に登記を備えたIが、所有権の主張をすることができる(民法第177条、判例)。
【1996 問 3】 Aの所有する土地について、AB間で、代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転する旨約定して締結された売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
2 BがAに代金全額を支払った後、AがBへの所有権移転登記を完了する前に死亡し、CがAを相続した場合、Bは、Cに対して所有権の移転を主張することができる。
正しい。相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するため、Bは、Cに対して所有権の移転を主張することができる(民法第177条、第896条)。

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