民法第162条(所有権の取得時効)

2015年(平成27年)

【問 4】 A所有の甲土地を占有しているBによる権利の時効取得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Bが父から甲土地についての賃借権を相続により承継して賃料を払い続けている場合であっても、相続から20年間甲土地を占有したときは、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができる。
誤り。20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する(民法第162条第1項)。Bには、所有の意思がないため、時効によって甲土地の所有権を取得することはできない。
2 Bの父が11年間所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を占有した後、Bが相続によりその占有を承継し、引き続き9年間所有の意思をもって平穏かつ公然に占有していても、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することはできない。
誤り。占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる(民法第187条第1項)。したがって、Bは、父の占有を併せて主張することにより、時効によって甲土地の所有権を取得することができる(同法第162条第1項)。
【問 10】 遺言及び遺留分に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
4 被相続人がした贈与が遺留分減殺請求により全部失効した場合、受贈者が贈与に基づいて目的物の占有を平穏かつ公然に20年間継続したとしても、その目的物を時効取得することはできない。
正しい。遺留分権利者保護のため、遺留分を侵害する贈与は、減殺請求の何年前にされたものであるかを問わず、減殺請求の対象となるのであり、受贈者が贈与に基づいて目的物を平穏、公然に20年間占有しても、時効取得することはできない(民法第162条、最判H11.6.24)。

2014年(平成26年)

【問 3】 権利の取得や消滅に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
4 20年間、平穏に、かつ、公然と他人が所有する土地を占有した者は、占有取得の原因たる事実のいかんにかかわらず、当該土地の所有権を取得する。
誤り。20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する(民法第162条第1項)。したがって、土地の所有権を時効により取得するためには、占有者には、「所有の意思」が必要である。本肢では、「占有取得の原因たる事実のいかんにかかわらず」となっているため、誤りである。例えば、占有取得の原因たる事実が賃貸借契約の締結であるときは、占有者には「所有の意思」はないことになる。

2010年(平成22年)

【問 3】 所有権及びそれ以外の財産権の取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
2 自己の所有と信じて占有している土地の一部に、隣接する他人の土地の筆の一部が含まれていても、他の要件を満たせば、当該他人の土地の一部の所有権を時効によって取得することができる。
正しい。20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する(民法第162条)。土地の一部の所有権も時効によって取得することができる(判例)。
3 時効期間は、時効の基礎たる事実が開始された時を起算点としなければならず、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。
正しい。本肢記述のとおり(民法第162条、判例)。

2007年(平成19年)

【問 3】 Aが所有者として登記されている甲土地の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Aと売買契約を締結したBが、平穏かつ公然と甲土地の占有を始め、善意無過失であれば、甲土地がAの土地ではなく第三者の土地であったとしても、Bは即時に所有権を取得することができる。
誤り。10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する(民法第162条第2項)。

2004年(平成16年)

【問 5】 A所有の土地の占有者がAからB、BからCと移った場合のCの取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Bが平穏・公然・善意・無過失に所有の意思をもって8年間占有し、CがBから土地の譲渡を受けて2年間占有した場合、当該土地の真の所有者はBではなかったとCが知っていたとしても、Cは10年の取得時効を主張できる。
正しい。本肢記述のとおり(民法第162条、第187条)。
2 Bが所有の意思をもって5年間占有し、CがBから土地の譲渡を受けて平穏・公然に5年間占有した場合、Cが占有の開始時に善意・無過失であれば、Bの占有に瑕疵があるかどうかにかかわらず、Cは10年の取得時効を主張できる。
誤り。前主Bが占有開始時点で悪意または有過失ならば前主Bの占有開始から20年を経過しないと取得時効を主張できない(民法第162条、第187条)。
3 Aから土地を借りていたBが死亡し、借地であることを知らない相続人Cがその土地を相続により取得したと考えて利用していたとしても、CはBの借地人の地位を相続するだけなので、土地の所有権を時効で取得することはない。
誤り。占有の性質が他主占有から自主占有に変更になった場合は、所有権を時効取得することがある(民法第162条、第185条)。
4 Cが期間を定めずBから土地を借りて利用していた場合、Cの占有が20年を超えれば、Cは20年の取得時効を主張することができる。
誤り。Cの占有には所有の意思がなく、取得時効の主張はできない(民法第162条)。

1998年(平成10年)

【問 2】 所有の意思をもって、平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有しているBの取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Bの父が15年間所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を占有し、Bが相続によりその占有を承継した場合でも、B自身がその後5年問占有しただけでは、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができない。
誤り。Bは、承継した父の占有期間を承継することができるので、父の15年間と自分の5年間を併せて時効による甲土地の取得を主張することができる。ただし、前主(父)の占有を併せて主張する場合は、その瑕疵(悪意・過失)も承継することに注意しよう(民法第162条、第187条)。
2 Bが2年間自己占有し、引き続き18年間Cに賃貸していた場合には、Bに所有の意思があっても、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができない。
誤り。賃借人Cによる代理占有も自主占有に含まれるため、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができる(民法第162条、第181条)。
4 取得時効による所有権の取得は,原始取得であるが、甲土地が農地である場合には、Bは、農地法に基づく許可を受けたときに限り、時効によって甲土地の所有権を取得することができる。
誤り。農地法の許可がなくても、取得時効に必要な期間が経過すれば、取得時効は完成する(民法第162条)。

1992年(平成4年)

【問 4】 AがBの所有地を長期間占有している場合の時効取得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Aが善意無過失で占有を開始し、所有の意思をもって、平穏かつ公然に7年間占有を続けた後、Cに3年間賃貸した場合、Aは、その土地の所有権を時効取得することはできない。
誤り。10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する(民法第162条第2項)。この占有には、Cに3年間賃貸した場合も含まれる(同法第181条)。
2 Aが善意無過失で占有を開始し、所有の意思をもって、平穏かつ公然に7年間占有を続けた後、その土地がB所有のものであることを知った場合、Aは、その後3年間占有を続ければ、その土地の所有権を時効取得することができる。
正しい。占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、途中で悪意に転じても、10年間でその所有権を取得する(民法第162条第2項)。
3 Aが善意無過失で占有を開始し、所有の意思をもって、平穏かつ公然に7年間占有を続けた後、BがDにその土地を売却し、所有権移転を完了しても、Aは、その後3年間占有を続ければ、その土地の所有権を時効取得し、Dに対抗することができる。
正しい。本肢記述のとおり。時効完成前の第三者Dには登記がなくても対抗することができる(民法第162条、第177条)。
4 Aが20年間平穏かつ公然に占有を続けた場合においても、その占有が賃借権に基づくもので所有の意思がないときは、Bが賃料を請求せず、Aが支払っていないとしても、Aは、その土地の所有権を時効取得することができない。
正しい。本肢記述のとおり(民法第162条)。

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