民法第113条(無権代理)

2012年(平成24年)

【問 4】 A所有の甲土地につき、Aから売却に関する代理権を与えられていないBが、Aの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、表見代理は成立しないものとする。
1 Bの無権代理行為をAが追認した場合には、AC間の売買契約は有効となる。
正しい。代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない(民法第113条第1項)。追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる(同法第116条)。本人AがBの無権代理行為を追認した場合には、AC間の売買契約は有効となる。
2 Aの死亡により、BがAの唯一の相続人として相続した場合、Bは、Aの追認拒絶権を相続するので、自らの無権代理行為の追認を拒絶することができる。
誤り。無権代理人が本人を相続した場合には、本人が自ら法律行為をしたのと同一の法律効果を生じ、無権代理人は追認を拒絶することはできない(民法第113条、最判S40.6.18)。また、判例の中には、無権代理人は本人の地位を承継しながら、追認拒絶権を行使するのは信義則に反するとしたものもある(大判S17.2.25、最判S37.4.20)。
3 Bの死亡により、AがBの唯一の相続人として相続した場合、AがBの無権代理行為の追認を拒絶しても信義則には反せず、AC間の売買契約が当然に有効になるわけではない。
正しい。本人が無権代理人を相続した場合は、本人が追認を拒絶しても信義則には反せず、当該契約が当然に有効になるわけではない(民法第113条、最判S37.4.20)。
4 Aの死亡により、BがDとともにAを相続した場合、DがBの無権代理行為を追認しない限り、Bの相続分に相当する部分においても、AC間の売買契約が当然に有効になるわけではない。
正しい。無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分についても当該契約が当然に有効になるわけではない(民法第113条、最判H5.1.21)。

2008年(平成20年)

【問 3】 AがBの代理人としてB所有の甲土地について売買契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 Aが無権代理人であってDとの間で売買契約を締結した後に、Bの死亡によりAが単独でBを相続した場合、Dは甲土地の所有権を当然に取得する。
正しい。無権代理人が単独で本人を相続したときは、無権代理行為は、相続とともに当然に有効となるため、Dは、甲土地の所有権を当然に取得する(民法第113条、判例)。
4 Aが無権代理人であってEとの間で売買契約を締結した後に、Aの死亡によりBが単独でAを相続した場合、Eは甲土地の所有権を当然に取得する。
誤り。本人が無権代理人を相続したときは、無権代理は当然に有効とならない(民法第113条、判例)。

2005年(平成17年)

【問 3】 買主Aは、Bの代理人Cとの間でB所有の甲地の売買契約を締結する場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。
ウ CがBから何らの代理権を与えられていない場合であっても、当該売買契約の締結後に、Bが当該売買契約をAに対して追認すれば、Aは甲地を取得することができる。
正しい。本肢記述のとおり(民法第113条)。

2004年(平成16年)

【問 2】 B所有の土地をAがBの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
3 Aが無権代理人であっても、Bの死亡によりAがDとともにBを共同相続した場合には、Dが追認を拒絶していても、Aの相続分に相当する部分についての売買契約は、相続開始と同時に有効となる。
誤り。無権代理人が他の相続人とともに本人を共同相続した場合、被相続人B(本人)の追認権は分割されずに共同相続人全員が一致してはじめて行使できる(判例)。共同相続人Dが追認を拒絶している限りAのみでは追認できない(民法第113条)。
4 Aが無権代理人であって、Aの死亡によりBが単独でAを相続した場合には、Bは追認を拒絶できるが、CがAの無権代理につき善意無過失であれば、CはBに対して損害賠償を請求することができる。
正しい。Bは、本人の資格によって追認を拒絶しても何ら信義に反するものではないが、無権代理人の資格も相続していることから、相手方Cが無権代理について善意無過失ならば、CはBに対して無権代理人の責任を追及することができる(民法第113条、判例)。

1997年(平成9年)

【問 1】 Aが、Bの代理人としてB所有の土地をCに売却する契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、Bは、Aに代理権を与えたことはなく、かつ、代理権を与えた旨の表示をしたこともないものとする。
1 契約は、B又はCのいずれかが追認したときは、有効となる。
誤り。代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない(民法第113条第1項)。追認できるのは本人Bであり、相手方Cには追認権はない。

1994年(平成6年)

【問 4】 Aは、Bの代理人として、Bの所有地をCに売却した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
2 BがAに抵当権設定の代理権しか与えていなかったにかかわらず、Aが売買契約を締結した場合、Bは、Cが善意無過失であっても、その売買契約を取り消すことができる。
誤り。代理人Aがその権限外の行為をした場合において、第三者Cが代理人Aの権限があると信ずべき正当な理由があるときは、表見代理が成立し、Cは、Bに対して、土地の引渡しを請求することができる(民法第110条)。また、代理権を有しないAがBの代理人としてした契約は、Bがその追認をしなければ、その効力を生じない(無効)。Bに取消権があるわけではない(同法第113条)。
3 Aに代理権がないにかかわらず、AがBの代理人と偽って売買契約を締結した場合、Bの追認により契約は有効となるが、その追認はCに対して直接行うことを要し、Aに対して行ったときは、Cがその事実を知ったとしても、契約の効力を生じない。
誤り。代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない(民法第113条)。

1993年(平成5年)

【問 2】 Aの子BがAの代理人と偽って、Aの所有地についてCと売買契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
4 Aが死亡してBがAを単独で相続した場合、Bは、Aが売買契約を追認していなくても、Cに対して当該土地を引き渡さなければならない。
正しい。本肢記述のとおり(民法第113条、判例)。

1992年(平成4年)

【問 3】 Aの所有する不動産について、Bが無断でAの委任状を作成して、Aの代理人と称して、善意無過失の第三者Cに売却し、所有権移転登記を終えた。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
1 Cが善意無過失であるから、AC間の契約は、有効である。
誤り。本肢は、Cの善意無過失しか要件となっておらず、表見代理が成立するとはいいきれない(民法第113条第1項)。
2 AC間の契約は有効であるが、Bが無断で行った契約であるから、Aは、取り消すことができる。
誤り。本肢は、Cの善意無過失しか要件となっておらず、表見代理が成立するとはいいきれないため、AC間の契約は有効であるとはいえない(民法第113条第1項)。また、取消権があるのは善意の相手方であり、本人Aには取消権はない(同法第115条)。

関係法令

このページを閉じる

ページ上部に戻る