民法第8条(成年被後見人及び成年後見人)

出題なし

関係法令

法令解説

  • 後見人の種類
    ① 未成年者に親権者がなく、または親権者が管理権を有しないことにより開始する場合を未成年後見人という。
    ② 後見開始の審判により開始する場合を成年後見人という。
  • 未成年後見人
    未成年後見人は、代理権・財産管理権および同意権、取消権を有する。また、未成年後見人は、未成年者の身上監護に関する事項について、監護教育権、居住指定権、懲戒権、および職業許可権という親権者と同じ権限を有する。
    父母が親権者である未成年者が後見開始の審判を受けた場合には、親権は共同行使が原則であり、後見人は1人に限定されるから、新たに後見人が選任されることになる(実際には親権者の一方になることが多いと思われる)。
    成年被後見人は、原則として成年者である被後見人という趣旨であるが、未成年者が後見開始の審判を受けた場合、未成年者が成年被後見人となることは可能である。
  • 後見人
    平成11年改正法により、配偶者法定後見制度を廃止し、家庭裁判所の職権で個々の事案ごとに最も適任と認める者を成年後見人等として選任することとした。
  • 複数または法人の成年後見人の選任
    平成11年改正法により、後見人の人数を1人に制限する旧規定の対象を未成年後見人に限定し、複数の成年後見人等を選任することができることとした。また、成年後見人等となる者が法人である場合の選任の考慮事項を明文で規定し、法人の成年後見人等を選任することができるようになった。具体的には、財産管理の事務については法律実務家が、身上監護の事務については福祉の専門家がそれぞれ分担することが考えられる。
    法人の資格については別段制限が設けられていない。その適格性については、家庭裁判所が個別具体的に判断することになる。
  • 成年後見人の職務
    成年後見人の権限には、①本人(成年被後見人)の財産に関する法律行為についての包括的な代理権、これに対応する包括的な財産管理権、②本人が行った法律行為の取消権がある。

    ① 代理権の範囲
    本人の財産に関するすべての法律行為が対象となる。例えば、預貯金の管理、払い戻し、不動産その他重要な財産の売買、賃貸借契約の締結、解除、担保権の設定、遺産の分割などの処分、また、要介護のための介護契約、施設入所契約、医療契約などの締結なども含まれる。これらに伴ってなされる、登記、供託の申請、要介護認定の申請などの公法上の行為の代理も対象となる。
    なお、「日常生活に関する行為(例えば、食料品、衣料品の買い物、電気・ガス・水道料の支払い、その支払いに必要な範囲内での預貯金の引出し等)」も成年後見人の代理権から除外されていないので、これについても本人を代理することができる。
    成年後見人は、成年後見事務に関して生ずる訴訟行為を本人に代わって行うこともできる。

    ② 代理権の制約
    成年後見人は、成年被後見人を当事者とする財産的法律行為については全面的な代理権を持つのが原則である。
    しかし、①成年被後見人との利益相反行為は、成年後見人は代理することができない。②成年後見監督人がある場合は、民法第13条第1項に定める元本の領収を除く事項について代理するときは、成年後見監督人の同意を要し、同意なくこれを行ったときは取消しの対象となる。③成年被後見人の行為を目的とする債務の発生に係わる契約は、成年被後見人の同意を要する。④成年後見人が成年被後見人の居住用不動産を売却、賃貸、賃貸借契約の解除、抵当権の設定などの処分をするには家庭裁判所の許可が必要である。住環境の変化が痴呆性高齢者に与える影響を考慮し、処分の当否を家庭裁判所の判断に委ねたものである。

    ③ 取消権
    取消権の対象は、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」以外の法律行為に限られる。なお、成年後見人は「同意権」はない。

    ④ 事務処理費用と報酬
    平成11年改正法では、後見事務処理費用を本人の財産から支弁することができるとしている。
    さらに、後見人および本人の資力その他の事情により、成年被後見人の財産の中から妥当な報酬を受け取ることができる。報酬の決定については、家庭裁判所が個々の事情に応じ判断することになる。

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